インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~ (さすらいの旅人)
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第2話
「あー……和哉、俺もうギブ……」
「おいおい。ギブアップするのはまだ早いだろうが」
「……周りを見てそんな事言えるか?」
「………まぁ確かに」
一時間目のIS基礎理論授業が終わって今は休み時間入って早々に一夏が俺に話しかけてくる。同じ男である俺に話しかけないと、この教室内の異様な雰囲気に耐える事が出来ないからだ。
因みに言っておくが、このIS学園ではIS関連教育をする為、入学式当日から普通に授業がある。一般の学校の入学式以降は本来案内をするんだが、この学園は地図を見ろの一言で終わっている。
「けど本当にどうにかならないのかこれは……」
「俺が一夏と同じクラスなだけ、まだマシだろ。もし別々だったらやっていけるか?」
「無理、絶対無理。そうなったとしても真っ先に和哉がいるクラスに行くから」
「……お前は俺を精神安定剤か何かと勘違いしてないか?」
気持ちは分からなくもないが、そこまで俺を頼りにされても正直困る。俺だってそれなりに一夏と同じ気持ちなんだから。
とは言え、俺と一夏以外は全員女子だけだから仕方ないよな。それはクラスだけでなく、学園全体でだ。
もうついでに『世界でISを使える男性二名』と言うのは世界的にもニュースになったらしく、当然学園関係者から在校生の全員俺達の事を知っている。
そう言えば俺の武道の師匠である竜爺が言ってたな。時間があったら、この学園にいる男性用務員の
「にしても廊下には他のクラスの女子がいるな。二、三年の先輩もいるみたいだし」
「……俺、本当にお前がいてくれて良かったって心底思う」
俺達はもう珍獣同然の扱いだな。廊下にいる女子達はともかくとして、このクラスにいる女子達が俺達に話しかけようとする気配が無い。
『あなた話しかけなさいよ』とか『ちょっとまさか抜け駆けする気ないでしょうね』とヒソヒソと話しているのが聞こえるから、容易に話しかけないんだろう。コッチとしては向こうがさっさと話しかけて、このギスギスした雰囲気を何とかして欲しい。
ま、向こうがそうしてるなら俺はISの参考書でも読んで気を紛らすか。
「お前、こんな状況でよく本なんて読めるな」
「読んでるだけで気が紛れるぞ。なんだったら一夏も俺と同じくISの参考書でも読んでたらどうだ? いつまでもそんな状態でいると、この先やってられないぞ?」
「………ソレが出来たら苦労はしないっての」
一夏は机に突っ伏してしまう。やれやれ、一夏にはもう少し度胸が必要だな。
まぁこのIS学園は百パーセント女子高だから、一夏だけでなく、この学園の女子の殆どが男子に免疫が無いから非常に珍しいんだろう。
ISの参考書を見ていて前から知ってる通り、ISが発表されてから今年で十年になるが、世界は急変……いや激変したと言ってもいい。
以前まであった戦車や戦闘機はISの前ではただの鉄くずに等しく、ソレ故に世界の軍事バランスは一気に崩壊。しかも開発したのが日本人だったので、日本は独占的にIS技術を保有している事になっていた。言うまでも無く、日本に危機感を募らせた諸外国はIS運用協定――通称『アラスカ条約』によってISの情報開示と共有、研究の為の超国家機関設立、軍事利用の禁止等が決められた。危険だから条約を結ぶと御託を並べたところで、俺から言わせれば、所詮ISと言う名の兵器を入手する為の口実にしか見えない。
もし日本が内緒でIS開発をしてたら、当然諸国が声高に抗議してくるだろう。不正だの条約違反だと言って、開発しているISの情報を開示と技術の提供を、と。そんな事になったら俺の師匠はこう言うだろう。『言ってる事が我侭な童(わっぱ)と同レベルじゃのう』と言う呆れた感じで。って、話しが少し脱線してしまったから話しを戻そう。
ISがある事により、今度はIS操縦者がどれだけ揃っているかと言う点が、即その国の軍事力へと繋がる。正しくは有事の際の防衛力と言った方が正しいが。そして操縦者は当然女……となって、どの国も率先して女性優遇制度を施工した。
その制度により『女=偉い』と言うふざけた構図があっと言う間に浸透し、この十年で女尊男卑社会に至ったと言うわけだ。ISに乗っている操縦者はともかくとして、乗ってもいない女が偉そうに男を奴隷の如く当然のように扱うのが物凄く気に入らない。
以前俺が休日に買い物をしてた時、見知らぬ女がいきなり『このバッグを自分の代わりに払え』等とふざけた事をほざいた。当然俺はそんなの自分で買えと言い返したが、女は偉そうな態度で『自分の立場が分かってないようね?』と言ってバッグを買わないと俺を警察に突き出すと脅しをかけてきた。女性優遇制度がある故、警察は女の戯言に従わざるを得ないから俺を連行する流れになる事を女は分かっている。本来ならそこで根負けして従うしかないが俺は違う。思い上がったバカ女には師匠直伝の『睨み殺し』を使って黙らせてやった。それを物の見事に受けたバカ女は、恐怖に怯えて失禁し、周囲の人から恥を晒す事態になった。あの時は本当に面白かったなぁ。強気に出てたバカ女が一気に怯えて逃げていく無様な姿が。
「何笑ってんだ、和哉?」
「ん? ……ああ、ちょっと休日にあった面白い出来事を思い出してな」
俺が思い出し笑いをしてると一夏が不可解な顔をして訊いてきた。そう言えば一夏もあの場にいたから知ってる筈だ。
「休日って……もしかしてアレのことか?」
「ああ、アレだ。中々愉快だったろ? 無様に逃げていくのを」
「………俺は生きた心地がしなかったぞ。正直アレは和哉のやり過ぎだと思うが」
「ふんっ。人を脅しておいてタダで済ませるほど、俺は優しくない」
「頼むから此処でそんな事しないでくれよ?」
「それは向こう次第だな」
一夏は俺と話して少しばかりだがリラックス出来ているようだ。俺と話でもして気を紛らわそうとしているんだろう。
そうして話している内に……。
「……ちょっといいか」
「え?」
「ん?」
突然、ポニーテールの女子が俺達に話しかけてきた。いや、俺達と言うより一夏の方を見ているな。もうついでに周りにいる女子達がざわめいてる。この様子を見る限り、この女子は一人思い切って行動に出たようだな。
「……箒?」
「………………」
やっぱり一夏の知り合いみたいだな。確かこの女子は自己紹介で篠ノ之(しののの)箒(ほうき)と言ってたな。失礼だが随分変わった苗字と名前だ。
「えっと、篠ノ之さんだったな。用があるのは一夏だけか?」
「そうだ」
「だってさ一夏」
「あ、ああ……。で、何の用だ?」
「………………」
何だこの篠ノ之って人は。一夏を見た途端に睨んでいる気がするんだが。
「廊下でいいか?」
場所を変えて話でもする気か。確かにこんな教室で話せる状況じゃないからな。
「早くしろ」
「お、おう……あ」
スタスタと廊下に行ってしまう篠ノ之。一夏も後に続こうとしたが俺の方を見てくる。
「どうした?」
「いや、和哉を置いて行くのはちょっと気が引けて……」
「俺に構わず気にするな。向こうは待ってくれなさそうだぞ?」
「え? あ……」
引け目を感じている一夏に、既に廊下に行ってた篠ノ之が此方を睨む……と言うより一夏を睨んでいた。
「ほら行ってこい。お前の知り合いはどうも気が短そうだからな」
俺がそう言うと一夏はすぐに篠ノ之に付いて行き廊下に行った。
さて、此処には男子が俺一人だけになってしまったが、女子の事は無視してまたISの参考書でも読んでるか。
俺がISの参考書を開こうとしたその時……。
「ちょっと、よろしくて?」
「ん?」
今度は別の女子が俺に声を掛けてきた。
声をかけられた俺が振り向くと、相手は地毛の金髪が鮮やかな女子だった。白人特有の透き通ったブルーの瞳が、やや吊り上がった状態で俺を見ている。
「確かアンタはセシリア・オルコットだったな。俺に何か用か?」
「まあ! なんですの、その返事は。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言う物があるんではないかしら?」
「………………………」
どうやらコイツは俺の嫌いな部類に入る女みたいだ。
さっき休日の事を言ったが、今の世の中、ISのせいで女性はかなり優遇されている。いや、優遇どころか、もはや行き過ぎて『女=偉い』のふざけた構図になっている。そうなると男の立場は完全に奴隷、労働力だ。俺が休日にて街中ですれ違っただけのバカ女がパシリをやらされる男の姿は珍しくない。
この女はいかにもと言った感じで、腰に当てた手が様になっているあたり、実際いい所の身分だろうな。
因みにIS学園では無条件で多国籍の生徒を受け入れなくてはいけないと言う義務があるため、外国人の女子は珍しくない。寧ろ、クラスの女子の半分がかろうじて日本人だ。
「なんですの? 今度は無言になって。言いたい事があるなら言ったらどうですか? 全く、これだから男は……」
もうついでに言っておくと、ISを使える。それが国家の軍事力になる。だからIS操縦者は偉い。そしてIS操縦者は原則女しかいない……等とふざけた考えを持っている女もいるから、目の前にいる女も当然その一人に入る。
「じゃあ言わせて貰おう。イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットが何故俺に話しかけるんだ?」
「あら、どうやらわたくしの事は知っているみたいですわね。及第点として、先程の無礼な態度は許してさし上げますわ」
本当に偉そうな女だな。『睨み殺し』を使おうか? いや、そんな事したらコイツの面目が丸潰れになるから止しておこう。下手に恥を掻かせて国際問題にまで発展したら面倒だし。
「あっそ。で、そっちはいつになったら俺の質問に答えてくれるんだ?」
「ふふん。本当でしたら、さきほど廊下に行った織斑一夏にも用があったんですが……」
お前は一々前置きが無いと本題に入る事が出来ないのか? って突っ込みたい。
「先ずは貴方から用を済ませましょう。わたくしは優秀ですから……」
キーンコーンカーンコーン
向こうが言ってる最中、チャイムが鳴った。
「で? アンタが優秀だから、何だ?」
「……………次の休み時間の時に言います」
出鼻を挫かれたオルコットは渋々と自分の席に戻る。アイツは一体何がしたかったんだ?
「席につけ! 授業を始めるぞ!」
と、俺が考えていた矢先に我等が担任である千冬さんと副担任の山田先生が教室に入って来た。チャイムが鳴って間も無いと言うのに速いな。
そして一夏と篠ノ之が教室に戻ってくると……。
パアンッ!
「とっとと席に着け、織斑」
「……ご指導ありがとうございます、織斑先生」
一夏にだけ出席簿で頭を殴っていた。千冬さん、貴方は篠ノ之にもやらないんですか? アイツも遅れているのに。
◇
「――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――」
スラスラと教科書を読んでいく山田先生。内容がどっさりと積まれた教科書五冊あるが、それでも何とか付いて行ってる。前もって予習してなかったら、全然分からなかったな。
しかし隣にいる一夏が気になる。教科書を見ているが全然分からない顔になってて戸惑っている様子だ。アイツまさか事前学習してないんじゃ……充分あり得るな。そうでなけりゃ、あそこまで戸惑っていない筈だ。
って、今度は俺を見てきたな。
「(どうかしたか?)」
さっき気付いたと言った感じで一夏に小声で訊く。
「(和哉、これ分かるか?)」
「(まぁそれなりには……けど大半は……)」
「(だよなぁ……)」
「(とにかくノートだけでも書いとけ。黒板に書かれてる内容は教科書の内容を要約してるみたいなもんだ)」
「(お…おう、そうする)」
そして一夏は黒板に書いてある内容を必死にノートに書き始めた。
と、そんな時……。
「織斑くん、神代君、何かわからないところがありますか?」
俺と一夏のやりとりに気付いた山田先生が訊いてきた。
「あ、えっと……」
いきなりの事に一夏は開いている教科書に視線を落とす。おい、教科書を見ても解決しないぞ?
「わからないところがあったら訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから」
一夏の様子を見た山田先生がえっへんとでも言いたそうに胸を張った。何故か先生の部分がやたらと強調している気がするのは俺の気のせいか?
そんな山田先生に一夏は……。
「先生!」
「はい、織斑くん」
何か決意したかのように立ち上がり、やる気に満ちた返事をした。山田先生もそれに乗ってるな。
「ほとんど全部わかりません」
………おい一夏。お前はソレを言いたいが為に決意したのかよ。まぁ分からない事は分からないから、ここは恥を忍んで正直に言った方が良いと思って決意したんだろう。
「え……。ぜ、全部、ですか……?」
一夏の予想外な答えに山田先生は顔を引き攣らせる。さっきまでの頼れる態度が一気に無くなったな。ちょっと期待してたのに。
「え、えっと……織斑くん以外で、今の段階でわからないっていう人はどれくらいいますか?」
挙手を促す山田先生だが、誰一人手を挙げなかった。当然俺もな。
「っておい和哉! お前分からないんじゃなかったか!?」
「いや、今の段階でも充分に付いて行けるんだが……」
「よ、良かった。神代君は分かっているみたいですね……」
俺の返答に安堵する山田先生。もし俺が一夏と同じ事を言ったら、完全に涙目になるだろうな。
「……織斑、入学前の参考書は読んだか?」
突然教室の端で控えていた千冬さんが一夏に訊いてくる。そう言えば一夏の奴、俺が休み時間に読んでた参考書を持って来ていなかったな。
「古い電話帳と間違えて捨てました」
パアンッ!
素直に答える一夏に本日四度目の千冬さんによる制裁が下された。ってか一夏。何考えてるんだお前は? あの参考書は必読だろうが。
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」
俺の内心突っ込みと同じ事を言う千冬さん。我が弟ながら情け無い、とでも思ってるかな?
「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」
「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」
「やれと言っている」
「……はい。やります」
千冬さんのギロッとした睨みに一夏は従うしかなかった。流石は世界最強のブリュンヒルデ。有無を言わせない迫力だ。もはや地獄から来た鬼教師と呼ぶに相応しい。
「神代、また何か失礼な事を考えていないか?」
「いえ、何も」
あ、危ねぇ~。普通に言い返さなかったら俺も一夏と同じ運命を辿るところだった……!
「………まあ良い。だが三度目は無いぞ?」
「何のですか? それより参考書を再発行するまで、俺が一夏にコレを貸しておきましょうか? もう一通り読みましたから」
「そうだな。織斑、ちゃんと読んでおけよ」
「は…はい。助かったよ和哉。やっぱりお前は頼りになるなぁ~」
「…………………」
俺が参考書を渡し、一夏は安堵する顔になると、何故か千冬さんが俺を睨んできた。あの、どうしてそんな恐い顔をして睨むんですか? あのう、俺はあなたに何かしましたか?
そう考えていると千冬さんは一夏の方を見ている。
「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしたいための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても答えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」
ご尤もな正論ですね。
しかし俺と一夏は、希望してまでここに来た訳じゃない。
あれは受験が終わった後だったな。俺が家で修行してる時に突然黒服の男達がやってきて、『君を保護する』とか言って、IS学園入学書を置いていった。突然の出来事に戸惑ったが、よくよく考えて『女の園に俺と一夏を放り込む事が保護なのか?』って奴等に突っ込みたかった。その後は師匠の家に行って散々愚痴っていたが。師匠も師匠で呆れ顔になってたし。
「……貴様等、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」
貴様等? って事は一夏も俺と同じ事を考えていたみたいだな。
「望む望まざるにもかかわらず、人は集団の中で生きてなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」
辛辣な台詞をどうもありがとうございます。要するに現実と直面しろと言いたいんだろう。確かこの人は現実主義だと一夏が言ってたな。当然俺もそれは分かる。
だがここまで言われると、流石にムカッとしたので少しばかり反撃させてもらおう。
「では織斑先生は、この先何が遭っても現実と直面しろと?」
「そうだ」
「ふむ……例え話になるんですが、もし貴方が全く知らずに上層部が一夏を戦場の捨て駒と決定されて、『これが現実だから受け入れろ』と言われたらどうしますか?」
「!」
「おい和哉、何で俺を引き合いに出すんだよ? ってか俺を捨て駒って……」
俺のもしもの問いに千冬さんは目を見開き、一夏は顔を顰めていた。
「で、素直に受け入れますか?」
「……………そんな事を訊く暇があるなら、早くISについて覚えることだ。山田先生、続きを」
「あ、はい……」
千冬さんは俺の問いには答えず、山田先生に授業を再開するように言って教室の端に戻った。
流石の千冬さんも俺の問いに答えることは出来なかったみたいだな。もしあの場で千冬さんがYesと答えてしまったら、自分の肉親である一夏を平然と切り捨てる冷酷な女になる。かと言ってNoと答えると、さっき自分で当然のように言った事が矛盾してしまう。つまり千冬さんは始めから俺の問いに答える事は出来ない。増してやYesは特に絶対と言っていいくらい答えないだろう。何しろ自分の命より大切である弟の一夏を切り捨てるなんて尚更あり得ないからな。我ながら随分と意地悪な質問をしたもんだ。
「え、えっと、織斑くん。わからないところは授業が終わってから放課後教えてあげますから、がんばって? ね? ね?」
俺が千冬さんの心情を察していると、山田先生は一夏に詰め寄っていた。山田先生って一夏より身長が低いから、必然的に上目遣いになっていた。
「はい。それじゃあ、また放課後によろしくお願いします」
一夏がそう言うと……。
「ほ、放課後……放課後にふたりきりの教師と生徒……。あっ! だ、ダメですよ。織斑くん。先生、強引にされると弱いんですから……それに私、男の人は初めてで」
山田先生はいきなり頬を赤らめて妄想染みた事を言い始めた。この人大丈夫か?
そして山田先生の行動により、女子達が一斉に一夏を見ている。勝手に妄想してる山田先生の勘違いなのに気の毒だな。
「で、でも、織斑先生の弟さんだったら……それに私は神代君でも……」
「あー、んんっ! 山田先生、授業の続きを」
「は、はいっ!」
全然妄想から帰って来ない山田先生を、千冬さんの咳払いで呼び戻す。
そして山田先生は慌てながら教壇に戻って……足を引っ掛けてこけた。
「うー、いたたた……」
「(……なあ和哉、大丈夫か? この先生……)」
「(……俺に聞くな)」
こける山田先生に俺と一夏は果てしなく前途多難な気がするのであった。
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