夫婦漫才 恵美たん・まー君
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舞台の両袖から二人が出てくる。
左側が恵美たん、右側がまー君。
恵美たんはドスの効いたガラガラ声。
マー君は優しいが心のない声。
恵美「ということでですね〜、ま、私たちも頑張らにゃあかん思うとるんですけどね」
まー「そうそう頑張らなあかんですわ、ねぇ」
恵美「いや〜、すっかり朝晩冷え込むようになりましたな〜、ほんまかなわんわ」
まー「いやほんまほんま、毎日さっぶいですわー」
恵美「最近うちな、昼間にしてることがあるんや。なんやと思う?」
まー「昼間にですか?何やろー、あ、せや、オーバードーズ」
恵美「そうそう、デパス1シート、痛み止め1シート、降圧剤1シート、それをビールで飲んでって、なんでやねん!違うわ、アホ(まー君の頭をバシっと殴る)」
まー「(頭を押さえながら)違うかぁ。あ、せや、あれやろ、デマブログ!」
恵美「そうそう、げへへへ、今日はどんなデマ書いてみんなをびっくりさせてやろうかな〜、せや、ダニに噛まれた痕を放射能のせいにしとこ、って違うわ!アホ(まー君を蹴り倒す)」
まー「(ヨロヨロと立ち上がりながら)それも違うかぁ。なんやろなー、なんやろなー(もう完全にビビってる)あ、せや、ミナミの帝王やろ、な、な、」
恵美「そうそう、アンニュイな気だるい午後に観るミナミの帝王、ああうちも萬田はんからお金借りて、返せなくなって、ほいでこの豊満な体で返したい〜〜〜って、違うわ!ドアホ!(まー君の頭に灯油をかけて火をつける)」
炎に包まれ悶え苦しむまー君。スタッフが上着をバサバサかぶせ火を消す。
まー「ハァハァハァハァ、また違ったか、へへへ、わいはダメ人間やな〜、相方の昼間ハマってることもわからへん。もうダメや〜」
そういって舞台袖の壁に思いっきり頭を打ち付ける。何度も何度も。客は引き、椅子から立ち上がる人もいる。
恵美「わかった、わかった、まー君、何もそこまですることはないで〜、もう怒ってへんからこっちきいや」
まー「(恐る恐る)で、恵美たん、昼間何しとるん?」
恵美「ビデオ観とるんや。ビデオ言ってもエロやないでぇ。うちとあんたの10年前の結婚式のビデオや」
まー「ああ、あのビデオなー、でも10年前やないで、去年が10年目や。ほら、10周年の記念にフローラで写真撮ったやないか。ブログにも書いてるで」
今日、結婚10周年で、結婚式場でみんなで、記念写真を、撮りました。「 経済は、 『 お金 』 使わなければ、健全化しない ・・・ 」 と ・・・ わたくしは、思っているので、 今日は、 おもいっきり、使いました。
わたくしたちの、 「 結婚 10 周年 記念撮影 」 でした。 わたくしが、出資して、 ブライダルホールに、 強引に ・・・ 頼み込んで ・・・ 生徒たちにも、 「 ドレス 」 を 着させてもらいました。 南相馬市 は、 確実に、「 生きて 」 います。 こんな時期 だからこそ、 「 経済 」 を ・・・ 軌道に乗せていくのです。 みんなで、 めいっぱい 着飾って、 記念 写真を、撮りました。 わたくしは、 ドレスを、3 着 ・・・ 主人は、 タキシードを、2着 ・・・ 塾生たちには、 色とりどりの ドレス を、 それぞれ、 交換ししてもらいなずら、 3 着 ずつ、着せました。 生徒には、化粧・宝石類 は、付かないので、 わたくしが、1 時間 かけて、 メイクと、髪結いして、 わたくしが、持っていた ネックレスや、イヤリングを それぞれに、付けさせました。 化粧も、したことがない 生徒たちでしたから、 とっても、可憐で ・・・ わたくしなんて、 おもいっきり、かすんでいました (笑) 男の子にも、 写真 うつり が いいように、 ファンデーション を、塗って、 式場へ行きました。 午後は、 自宅 ( 塾 ) に、戻って ・・・ 「 宴会 」 を しました。 生徒たちも、 食べに食べまくって、 今日だけは、 「 勉強のこと は、一切 考えない ! 」 という、スローガンのもと、 愉快に過ごしました。 生徒たちも、 わたくしたちも、 ものすごく、楽しい 「 1 日 」 でした。 明日からは、また、 『 受験勉強 まっしく゜ら ・・・ 』 です。 こんな、状態でも、 南相馬市 には、活気があります。 お互いに、「 お金 」 を、使い合って ・・・ 経済の 「 立て直し 」 をしようと、 考えています。 また、 明日から、「 放射能 」 と、闘います。 今日は、 3.11 以来、 初めての、 つかの間の 、 「 やすらぎ 」 でした。 また、がんばります 。 2011/10/09 18:50:54
恵美「なんや、じゃあ、今年は11年目かい。どーも最近時間の経過がよくわからんようになってしもて塩梅悪いわ」
まー「で、そんなビデオ観て、何考えてたんや」
恵美「何考えてたって・・・それは言えんわ」
まー「いいやろー、何考えてたんやって」
恵美「だから恥ずかしいって」
まー「いいやろ、言えや。ナァー、言えや、ええやろ」
恵美「言えへんって」
まー「ナァー、ええや、グホッ!」
恵美「しつこいわ!!!」
その瞬間、まー君の体は宙を舞った。恵美たんのアッパーカットが炸裂。彼の体は舞台の下の床に落ち、3回バウンドした。
恵美「あ、あんた、大丈夫か?ついカーっとしてもたわ。堪忍な、堪忍な、まー君」
まー「(血だらけで舞台に上がってくるが笑顔)大丈夫やて、ハァハァ、そんな、ハァハァ、恥ずかしいんかい、ならもう聞かんわ」
恵美「(後ろ手に手を組み、上半身でイヤイヤしてかわいこ振りながら)ビデオ観ててな、うちな、うちな・・・やっぱりあんたのことを愛してるわて思たんよ」
まー「恵美たん」
恵美「せやからなー、せやからなー」
まー「わいも愛してるでぇ」
二人舞台の中央で見つめ合い、そして抱き合う。抱き合ったまま漫才は続く。
恵美「まー君。あのなぁ、うちお願いがあるんや」
まー「なんやの?わい、恵美たんの言うことやったらなんでも聞くで」
恵美「ありがとう。でな、うちらたった二人の家族やんかー」
まー「うん、うん」
恵美「でな、今のままでは不自然思うねん」
まー「ほうほう(表情がが険しくなってくる)」
恵美「うち寂しいねん。だから来年4月に南相馬に帰ってきて欲しいねん。ええやろ」
恵美たんの腕に力がこもる。まー君、ゲホッという声を出す。
客席は静まり返っている。しばらく間を空けてまー君が恵美たんの目を見つめる。
そして答える。
まー「それだけはでけへん」
恵美「・・・」
まー「勘弁してや」
恵美「・・・」
まー「なっ、なっ、なぁって」
恵美たん、大きく息を吸い込む。
恵美「あんたは、あんたは」
まー「はい?」
恵美「あんたは医者ですか!!!」
バキバキ!バキバキ!
恵美「もうええわ」
オチのセリフ「あんたは医者ですか!」を言って恵美たんはドヤ顔で下手に去る。舞台中央には背骨の折れたまー君が倒れている。あまりのことに誰も声を上げない。静かに緞帳が降りてきた。
いつもの「相方を病院送りにする芸風」とは言え、なかなか慣れることはできないな、そう思う私だった。
え?私?
私はこの劇場の支配人の山下ですにゃ。
館内放送
「え〜、次はお待ちかねの綾小路きみまろさんの登場です。それまで10分間休憩いたします。え?まー君はけた?救急車?そうやっぱり・・・・あ!失礼しました!え、10分間休憩となります。あ、それからTwitterをやっていらっしゃる方は、この漫才についてつぶやかないようお願いいたします」 |