中国の労働力減少、ニューノーマルを正当化か-GDP発表へ
10月17日(ブルームバーグ):中国経済の伸びが鈍化しているとはいえ、熱交換器メーカー社長の劉鳳林さんが今年、経験豊かな溶接工10人を採用することが容易になっているわけではない。
中国経済は世界的な金融危機以降で最も大幅な減速に見舞われている。それにもかかわらず、劉さんは3人を何とか確保できただけだった。同国南部の広東省珠海にある会社を切り盛りする劉さん(46)は、「求人募集を貼り出したら出稼ぎ労働者が大勢集まるといったシナリオは、とうの昔になくなった」とし、「状況は年々悪化している」と話した。
中国の7-9月(第3四半期)の国内総生産(GDP)は、ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト43人の予想中央値で前年同期比7.4%増の見込み。予想通りなら2009年1-3月(第1四半期)以来の低い伸びで、7四半期連続の減速となる。発表は18日。
劉さんの話は、中国共産党がなぜ、より強力な金融・財政的措置を打ち出さないのかを理解するヒントを与える。中国当局は今年、自国の労働市場は厳しいと指摘したが、雇用創出を求める圧力は弱まりつつある。1979年に導入した一人っ子政策により、労働力人口に加わる人数が制限されてきたためだ。
共産党の機関誌「求是」によれば、温家宝首相は2010年まで、8%成長は「雇用の基本的な安定」のために不可欠で、それを下回れば問題が生じると述べていた。
人口動態ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)の中国担当チーフエコノミスト、ルイス・クイジス氏(香港在勤)は「中国の人口動態が変化するとともに、この基準も変わるはずだ」と指摘。労働市場の回復力からすると、「大規模な政策対応を講じる緊急性は薄れている」と述べた。同氏は、世界銀行の北京事務所での勤務経験がある。
同氏の試算では中国の労働力人口の伸びは現在、年率0.5%で、10年前の3分の1にすぎない。この数字を基にすると、基準となる成長率は7%になるもようだという。
国際通貨基金(IMF)のロドラウアー・アジア太平洋局次長は17日に香港で、7-8%成長は中国にとって「ニューノーマル」だとの見解を示し、ハードランディングの可能性は極めて低いと述べた。
7-9月期の成長率 が予想通り7.4%に減速した場合、中国経済は1998年以降初めて、年間の成長率目標を上回れないリスクが高まる。温首相は3月、今年の目標を7.5%にすると発表した。
ブルームバーグ・ニュースが9月11-18日に実施した調査では、エコノミスト40人のうち6人が、今年の成長率予想を7.5%とした。昨年は9.3%を達成した。
原題:China Job Needs Show Why GDP Slowdown May Be Tolerated:Economy(抜粋)
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更新日時: 2012/10/17 15:15 JST