【動画】音声は原告代理人(遺族側)提供 |
山形市で昨年、一人暮らしの男子大学生(当時19)がアパートで死亡したのは、119番通報をしたのに救急車が出動しなかったためだとして、母親が山形市に約1千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が9日、山形地裁であった。市側は不出動とした対応は適切だったとして、全面的に争う姿勢を示した。
亡くなったのは、当時山形大2年生だった大久保祐映(ゆうは)さん。訴状などによると、大久保さんは、昨年10月31日午前5時11分に自宅アパートから「体調が悪い」と119番通報し、救急車を要請。山形市消防本部は救急車を出動させず、近くの病院を案内してタクシーで行くよう促した、としている。市側は、119番通報を受けた同本部の通信員が「歩けるの?」と尋ねた際、大久保さんが「動けると思います」と話したことなどを不出動の理由に挙げている。
大久保さんは、その9日後に自室で遺体で発見された。死体検案書で死亡推定日は通報翌日の11月1日ごろ、死因は「病死疑い」とされた。タクシーを呼んだ形跡はなかった。
9日の口頭弁論では原告側の意見陳述があり、弁護団が「出動が大原則の救急車の出動をしなかったという、極めて初歩的で重大な過失による著しい職務怠慢による人災」と主張した。
これに対し、市側は答弁書で「対応は手順に沿ったもので判断は適切だった」と主張している。閉廷後、代理人の弁護士は「通信員がタクシーの利用を誘導したことなどはなく、緊急性があったかも疑問だ」と話した。
◇
119番通報の音声データは、亡くなった大久保祐映(ゆうは)さんの母親が山形市に開示請求をして入手し、公開した。朝日新聞は弁護団に電子媒体での利用許可を得て、大久保さんの住所や病院名などを省いた音声データの提供を受けた。