1票の格差 衆参ともに「違憲状態」10月17日 18時23分
おととしの参議院選挙で、選挙区ごとの1票の価値に最大で5倍の格差があったことについて最高裁判所大法廷は判決で、憲法違反の状態だと判断するとともに、選挙制度そのものの速やかな見直しを求めました。
違憲状態の判断は、衆議院選挙でも示されていて、衆参両院の1票の格差がともに憲法に違反した状態だと指摘される異例の事態となりました。
おととし7月の参議院選挙で選挙区ごとの1票の価値に最大で5倍の格差があったことについて2つの弁護士グループが選挙権の平等を保障した憲法に違反すると主張していました。
判決で最高裁判所大法廷の竹崎博允裁判長は「1票の価値の格差は、違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態だった」と指摘し、憲法違反の状態だという判断を示しました。
さらに、判決は「都道府県を単位とした今の選挙制度を維持したまま格差をなくすことは著しく困難になっている。できるだけ速やかに選挙制度の仕組み自体を見直す立法的な措置を講じて不平等な状態を解消すべきだ」と指摘しました。一方で「制度の見直しには政治的な判断が求められる」などとして原告が求めた選挙の無効は認めませんでした。
また、17日の判決では、15人の裁判官のうち3人が「憲法違反だ」とするより踏み込んだ意見を述べました。
最高裁は3年前の衆議院選挙で最大2.3倍の格差があったことについても「違憲状態」だという判断を去年示していて、衆参両院の1票の格差がともに憲法に違反する状態だと指摘される異例の事態となりました。
参議院選挙の格差の是正を巡っては、選挙区の定員を「4増4減」する公職選挙法の改正案が継続審議となっていて成立すれば、おととしの国勢調査の結果に基づく1票の格差は、最大で5.12倍から4.75倍に縮小されます。
しかし、最高裁の判決は、今の改正案では不十分だと判断し「立法的措置」という強い表現を使って国会に制度そのものの速やかな見直しを求めるものとなりました。
“政府も適切に対処”
藤村官房長官は記者会見で、「政府としても厳粛に受け止めている。判決の詳細は、まだ承知していないが、内容を精査したうえで、適切に対処しなければならない。定数配分規定を含めた参議院の選挙制度については、これまでも各党各会派で議論が行われてきたが、重要な課題であり、各党の議論をふまえて、政府としても適切に対処したい」と述べました。
また、藤村官房長官は判決の内容について、「過去の判決で、今回のように、『都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改める』などという記述はなかった。それなりに踏み込んだ判決が出されたという受け止めだ」と述べました。
原告“意義のある判決だ”
判決のあと、原告の2つの弁護士グループがそれぞれ会見を行いました。
このうち山口邦明弁護士は「3年前の最高裁判決は、『選挙制度の仕組みを見直す必要がある』と指摘しただけだったが、きょうの判決は『都道府県を単位とする今の仕組みを見直すべきだ』と具体的に表現しており大変、意義がある」と話していました。
別のグループの升永英俊弁護士は「きょうの判決は、都道府県単位の区割りを尊重する必要はないと指摘した画期的なものだったが、区割りについて、当選や落選の利害が絡む国会議員の裁量であるとした点では納得できない」と話していました。
“抜本的な制度の見直しを”
判決について選挙制度に詳しい東京大学大学院の川人貞史教授は「国会に対し選挙制度の見直しを強く求める判決で、現在の格差のまま次の選挙を実行してはならないというメッセージだ」と述べました。そのうえで、今後の見直しについて、「これまでの対応では不十分だということが判決で明らかになったので、国会は各党だけでなく国民にも分かる形で議論し、抜本的な制度の見直しを進めるべきだ」と指摘しました。
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