山梨2人殺害:被告目撃証言の男性「検察の意向でうそ」
毎日新聞 2012年10月16日 23時09分(最終更新 10月16日 23時35分)
山梨県のキャンプ場で00年に男性2人が殺害された事件などで殺人罪などに問われた元建設会社社長、阿佐吉広被告(63)=1、2審死刑、上告中=について、2審段階で「被告は殺害現場に来なかった」と証言を翻したキャンプ場元管理人の男性(69)=別の事件で受刑中=が、毎日新聞に手紙を寄せた。1審公判で「被告を見た」と証言した理由を「不本意ながら検察の意向に沿った」などと詳述している。
◇本紙に手紙
被告の弁護団は記者への手紙と同様の内容が記された元管理人の陳述書を最高裁第3小法廷に提出している。
手紙は6月10日付。便箋5枚で、ボールペン書きとみられる。05年1月に検察側証人として出廷する前に、当時の甲府地検の公判検事と証人尋問の打ち合わせをした際の様子が記されている。
「『実は、私は(キャンプ場に通じる)橋の上で阿佐社長とは会ってもいなければ見てもいないんです』と、話したところ○○検事(手紙では実名)は『今更そのようなことは言わないでほしい。法廷でも一切そのような事は言うな』とクギをさされたのです」と記載。「私は前科者という弱みも有り(中略)不本意ながら検事側の意向に沿った」とし、「法の手によって罪なき人を此(こ)の世から葬り去る(中略)法的殺人の片棒をかつがされるところでした」と書いている。
事件を巡っては阿佐被告による殺害を裏付ける物証がない中、元管理人による1審の証言のほか、同様に上告審で証言を覆した男性受刑者(56)を含む共犯者3人の下級審での証言が有罪判決の主な根拠となっている。元管理人はこれまでの取材などに、被害者の1人が友人だったため検察側立証に沿う供述をしたと説明。弁護側は2審で元管理人の証人尋問を申請したが、東京高裁は却下している。
当時の公判検事は現在勤務する大阪地検の広報官を通じ「取材には応じられません」としている。【武本光政】