親知らず

2011年11月18日 17時0分 掲載

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質問

親知らずは抜歯したほうがよいでしょうか?

回答

正常であれば、抜歯する必要はありません。

詳細

 親知らずは、必ずしも抜歯をするわけではありません。上下の親知らずが正常にかみ合っていて、むし歯や歯周病になっていなければ、抜く必要はありません。
  親知らずが深い位置に埋まっている(低位完全埋伏)か、歯の一部が口に中に出ていて(一部萌出または不完全埋伏)も腫れや痛みなどの自覚症状がない(無症状の)場合は抜歯をしなくてもよいと考えます。

【親知らずは移植の利用】

 腫れたことがあっても、傾かないで正常に生えてきていれば、将来的にブリッジ(1本の歯がなくなっても両隣の歯とつなげること)の土台に使用できる可能性や、矯正治療で移動させ利用できる可能性があるので、抜歯せず経過観察します。この場合は、親知らずの汚れを十分に管理できなければなりません。
  また、失った歯の部分に、親知らずを移植する可能性がある場合にも抜歯をせずに経過を観察します。しかし、親知らずを抜歯することが多い20歳代ではこれらの可能性を予測するのは困難なことが多いのも事実です。

【親知らずの経過変化に注意】

 親知らずの状態は時間の経過とともに変化します。若い時には低位完全埋伏であっても、高齢になり周りの骨を失って、あたかも生えてきたような状態(仮性萌出)になった時には抜歯することもあります。
  さらに、無症状でも他の歯の治療でレントゲン撮影をしてたまたまわかることですが、手前の歯(第2大臼歯)の歯根を押して溶かしてしまう(吸収)場合があります。また、親知らず自体は無症状であっても、親知らずがかみ合わせの際に他の歯とぶつかり(咬頭干渉=こうとうかんしょう)、顎関節症(がくかんせつしょう)の原因となっている場合もあります。この場合は、親知らずを抜歯します。無症状だからと言って長期間放置することには問題があります。

【スポーツ選手は予防的に抜歯することも】

 下あごの親知らずが埋っていると、転んだり、殴られたりなどの外力が加わった時に下あごの骨折の原因になります。コンタクトスポーツ(ラグビー、サッカー、アメリカンフットボール、ラクロス、格闘技、バスケットボールなど)の選手では、無症状であっても“予防的に”抜歯することがありますが、あくまでも事前に十分な診察と同意が必要です。

 親知らずは、その存在自体が悪いわけではありません。正常に生えてきてかむことに十分役立っている場合には、むし歯などがあっても治療して大切に保存します。
  ある意味では、親知らずを抜くべきか否かについては、ケースバイケースとも言えます。自己判断よりは主治医から十分説明を受けて判断されることをお薦めします。


坂下 英明(さかした ひであき)

明海大学 歯学部 歯学科 病態診断治療学講座 口腔顎顔面外科学 教授


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