特集ワイド:「原発ゼロ」戦略、どこへ/下 自民政権、誕生したら… 米追従で再処理推進か
毎日新聞 2012年10月16日 東京夕刊
元経産官僚で、大阪府市統合本部特別顧問の古賀茂明さんも同意見だ。古賀さんは「米国は自国では再処理事業をしていない。だが、途上国の原発保有が増えれば使用済み核燃料の問題が各地で生じ、核のごみが世界中に広がることを懸念している。そこで日本に再処理させたいのが本音。安倍総裁は総裁選中、尖閣諸島や竹島の問題で中韓に対抗するために日米関係の強化を訴えていたが、米国の要請に応えて核燃サイクルを進めることで関係強化を図りたいのだと思う」と憤る。
6月、原子力規制委員会設置法の付則として、原子力基本法の改正が盛り込まれた。原子力基本法は原子力行政の憲法ともいうべき法律。そこに「我が国の安全保障に資する」との目的が追加された。この「安全保障の目的」は自民党の主張で入れられた経緯があり、他会派から「核武装の表明か」と懸念された。
しかし古賀さんは「核武装という国民から明らかに反発を受ける政策よりもむしろ、本音は、核燃サイクルを進めることによって米国の国際安全保障戦略に協力する方向性を固めていることが透けて見える」と警鐘を鳴らす。
安倍総裁は、福島原発を視察し「安全神話の上に立って原子力政策を進めた責任は大きいと反省している」と陳謝した。であるならば、今後のエネルギー政策を具体的に語るのが筋ではないか。
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【自民党のエネルギー政策】
・当面の最優先課題として、3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入、省エネの最大限の推進を図る
・原発再稼働の可否は安全第一の原則の下、順次判断し、すべての原発について3年以内の結論を目指す。安全性は原子力規制委員会の専門的判断にゆだねる
・10年以内に新エネルギーの安定供給構造を構築する
*自民党公式サイトより
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