特集ワイド:「原発ゼロ」戦略、どこへ/下 自民政権、誕生したら… 米追従で再処理推進か
毎日新聞 2012年10月16日 東京夕刊
甘利氏は安倍内閣(06年9月〜07年9月)時の経産相。当時、北陸電力志賀原発で臨界事故隠しが発覚し、さらに他の電力会社でも発電機の故障隠しなどの不祥事が相次いで露呈した。当初、甘利氏は「厳正に対処しなければならない」と憤り、原発の運転停止や設置許可の取り消しなど厳しい処分が予想された。ところが、甘利氏は「今後同様の事態が起きないようにすることが大切」と一転、発電所の保安規定を変更する行政処分を出しただけだった。
ある経産官僚は「省内で『現代の徳政令(鎌倉、室町時代に出された借金など債務を帳消しにする命令)だ』と呼ばれた」と打ち明ける。
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自民政権になれば、野田政権が「革新的エネルギー・環境戦略」で掲げた「30年代に原発ゼロ」は簡単に捨てられるのか。脱原発関連の著書の多い慶応大の金子勝教授(財政学)は「閣議決定は政権が代わっても、拘束力を持つ。しかし『環境戦略』の原発ゼロ方針は閣議決定に明確な文言として盛り込まれず、『不断の検証と見直しを行う』という表現になってしまった。こんな不明確な内容では拘束力さえない。つまり自民政権になって原発推進に転じたとしても、新たに閣議決定をしなくても『不断の見直し、とあるので閣議決定には反していない』との言い訳ができる」と説明する。
山岡さんは「連立政権か単独かで多少は変わるだろうが、自民党政権になれば、『原発ゼロ』方針や『稼働後40年で廃炉』など、脱原発の柱が骨抜きにされることが考えられる」と話す。