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イランがサイバー攻撃に関与―米政府高官

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 【ワシントン】米国の銀行などを狙ったサイバー攻撃について、米政府高官はイラン政府とつながりのあるイランのハッカーが仕掛けていると述べた。

イメージ Reuters

 米銀の他にも、ペルシャ湾で操業するエネルギー会社もサイバー攻撃の被害に遭っていた。政府高官によると、サイバー攻撃の「シグネチャー」(識別子)を基に米国の捜査当局が追跡したところ、イラン政府にたどり着いたという。

 米捜査当局者によると、ハッカーはイラン国内の大学やネットワーク・セキュリティ会社に在籍するコンピューターセキュリティーの専門家で、100人未満が組織的に関与したとみられる。

 イランの当局者に電話でコメントを求めたが、連絡はなかった。

 米政府高官はサイバー攻撃とイラン政府を結び付ける詳細な証拠は機密事項と述べた。しかし、イランのハッカーには政府が提供する支援や技術的な専門知識なしで大規模な攻撃を仕掛けるだけの資源がないと高官は指摘した。

 ある政府高官は「(こうしたハッカーは)普通のイラン人ではない」と述べた。

 パネッタ国防長官は先週、ニューヨークの講演でサイバー攻撃に関する政策を発表した際に、イランがサイバー攻撃を行っていることを示唆していた。パネッタ長官はイランを名指しすることはなかったが、サイバー攻撃が著しく拡大していると述べた。パネッタ長官は攻撃の阻止、攻撃者の特定、報復について概要を説明した

 米銀に仕掛けられたのはサービス拒否(DoS)と呼ばれる攻撃。コンピューターのプログラムを通じて、特定のウェブサイトを攻撃したり、接続を遮断したりする。しかし、捜査当局者の間ではさらに破壊的な攻撃が行われるのではないかとの懸念が生じている

 米国の銀行などを対象にしたサイバー攻撃が始まったのは今年初め。米国とその同盟国はイランによる核開発計画を阻止する目的で、同国の石油・金融セクターに対して厳しい制裁を科しており、米政府高官の中には、サイバー攻撃は制裁に対する報復と憶測する向きもあった。

 イランに対しては、「スタックスネット」など米国がかかわったハイテク攻撃が行われており、スタックスネットによる攻撃で、2008年からイラン・ナタンツの核施設では多くの遠心分離機が制御不能に陥った。サイバー攻撃はこれに対する報復の可能性もある。

 米国防総省の高官はイランが策略の一環としてサイバー攻撃を行ったとみている。米捜査当局者は、7月にブルガリアで起きたイスラエル人観光客への攻撃、5月にパキスタンで発生したサウジアラビア外交官殺害事件、昨年、ワシントンで発生したサウジ大使暗殺未遂事件にイランが関与していると主張している。

 イランはいずれの事件についても関与を否定している

 元米政府高官や捜査当局者によると、サイバー攻撃は今年1月に米国の銀行を対象にした仕掛けられたものが最初で、比較的小規模なものだったという。

 夏にかけて、攻撃はペルシャ湾や中東の石油・ガス会社にまで広がった。その後、最近になって米銀に対してさらに強力な攻撃が仕掛けられた。

 先週、さらに銀行3行が攻撃を受けた。いずれのケースも攻撃前に、インターネット経由で攻撃を知らせる警告があった。

 今年1月には、米銀の他にも、テルアビブ証券取引所やイスラエルの航空会社エル・アルのウェブサイトが攻撃を受け、ウェブサイトが停止した。サウジアラビア人を名乗る身元不明のハッカーが犯行を主張したが、捜査当局はイランが関与している可能性について調べている。

 当局者によると、イランのハッカーが再び攻撃を行ったのは今年7月。攻撃対象はサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコだった。この攻撃には「シャムーン」と呼ばれるウイルスが使われ、コンピューター3万台のデータが破壊された。「正義の剣(Cutting Sword of Justice)」を名乗るグループが犯行声明を出したが、米国の捜査当局はこれについても、イランが関係したとみている。

 8月には、カタールの液化天然ガス(LNG)大手のラスガスが攻撃を受けた。米政府高官によると、ラスガスへの攻撃も同じイランのネットワークによるものとみられている。攻撃で、ウェブサイトと電子メールサーバーの接続が遮断された。

 9月になると、このネットワークによる米金融セクターへの攻撃が加速した。このネットワークは事前に「カッサム・サイバー・ファイターズ(Qassam Cyber Fighters)」の名前で攻撃計画を明らかにしていた。

 9月18日には、このグループがバンク・オブ・アメリカを攻撃することを公表した。その後、JPモルガン・チェース、USバンコープ、PNCフィナンシャル・サービシズ、ウェルズ・ファーゴなども攻撃の被害にあった。

 先週はキャピタル・ワン・フィナンシャル、サントラスト・バンクス、リージョンズ・フィナンシャルの3行に対する攻撃が事前に通告された。通告後、銀行のウェブサイト運営に使われているコンピューターが攻撃されたり、ウェブサイトの処理速度が遅くなったり、コンピューターの接続が一時的に遮断されるなどの被害が生じた。

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