「編集長インタビュー」

日本人が想定外の問題に対応できない本当の理由

齋藤ウィリアム浩幸さんに日本の問題解決の方法を聞く【1】

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2012年10月17日(水)

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齋藤:もう1つ大事なのは、日本人の人口に女性が占める割合は51.4%なんです。わずかながら男性より人口も多いんですよ。結構、財布を握っているのは女性です。消費行動の主役は女性です。なのに、女性向けの物を作るための会議に女性がいなかったら、ちょっと変です。いくつかの会社の経営会議に出席した中で、この製品を女性に売ろうと言いながら、その会議の中に女性が1人もいないということが時々あるんですよね。女性のマインドセット(気持ちのあり方)を経営とか製品・サービスに反映しないと意味がありません。

女性自身がダイバーシティーを身に付けているということですね。

齋藤:はい。それに、女性であるということで、考え方とか価値観とか問題の処理の方法とかも違わけですが、今までそれを経営ストラクチャーに反映してこなかったことはもったいないと思います。

先ほど、チームでは率直にコミュニケーションができることが大事だとおっしゃいましたが、女性はコミュニケーションの面でも重要な役割を担うのでしょうか。

齋藤:チームを言い換えれば、コミュニケーションと言ってもいいというぐらいで、コミュニケーションはチームにはすごく大事な要素です。

 チームが動く根本はコミュニケーションをすることなんです。遠慮なく、ちゃんと言うことを言うというのが基本です。新入社員や大学制のインターンが企業の会長に向かって「これは違うんじゃない?」と言えるぐらいのことです。

女性はそういったコミュニケーション能力が高いということですか?

齋藤:アメリカでもよく言われますが、女性のEQ(心の知能指数)は男性より高いそうです。ただ、男性社会の中に、たった1人の女性を投入しても、なかなかうまくいきません。

 私は世界経済フォーラムの特別委員をしていて、女性の雇用問題を話し合うグループに入っていました。メンバーのうち14人が女性で私だけが唯一の男性です。これはすごいプレッシャーでした。相手は実務経験もキャリアも豊富な女性たちですから。

世界トップクラスの女性が集まる会議で出た結論とは…

 そこで、女性役員がいない上場企業は上場を廃止させてはどうか? という提言について話し合っていたときのことです。では、何人女性役員が必要かという話になりました。1人でも女性役員がいなければだめだ、というメッセージにしようと言ったら、「それはだめです」と、ある企業の女性副社長が言った。女性が1人だけだと、しゅんとなってしまって、言いたいことも言えなくなるから効率がよくないと言う。

 じゃあ、2人ならどうかと言ったら、ノルウェーの女性が「うちも10年前ぐらいに女性官僚を2人にしたけれどもだめでした」と言う。なぜなら、女性が2人だと女性同士でけんかしちゃうからだという。

 結果、3人が最少人数で、ベストは4人ということになった。世界のトップクラスの女性が集まった会議でダイバーシティーの議論ができて、ファクトとしてこういうことが分かった。これを日本で日本人の男性だけの会議で議論していたら、こんな結論は出てこないでしょう。


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飯村 かおり(いいむら・かおり)

日経ビジネスオンライン編集長。

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