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政治
【産経抄】10月17日
2012.10.17 03:15
[産経抄]
司馬遼太郎氏は『坂の上の雲』で明治27年からの日清戦争について「原因は、朝鮮にある」とやや刺激的に書く。といっても韓国や韓国人に罪を求めているわけではない。「罪があるとすれば朝鮮半島という地理的存在にある」というのだ。
▼半島は常に背後の大陸国家、中国(清)の影響下にあった。しかし海峡を隔てた日本にとって、これが完全に清のものとなれば国の防衛は成り立たない。そのため清を半島から追い出そうとしたのである。日露戦争もここに触手を伸ばすロシアへの危機感からだった。
▼「ゆらい半島国家というものは維持がむずかしい」と司馬氏は書く。例として欧州のバルカン半島やベトナム(インドシナ半島)をあげる。バルカン半島はしばしば背後の大陸国家の覇権争いの場となった。ベトナムをめぐっては仏と清との間で戦争も起きた。
▼亡くなったシアヌーク前国王のカンボジアもそのインドシナ半島にある。しかも隣国のベトナムなどに比べ小国だ。自伝では「地理と歴史は人の手で変えることはできない」とする。前国王も半島国家の難しさと悲哀をたっぷり味わったのである。
▼このため国際的批判は受けても終始、強大な大陸国家、中国に寄り添ってきた。中国もこれを利用し、自らの懐中に入れようとしてきた。晩年は北京でがん治療にあたり、亡くなったとき中国の次期最高指導者、習近平氏が「中国人民の古くからの友人」と称(たた)えた。
▼だが、前国王のこの極端な親中路線は今、アジアの軋轢(あつれき)を大きくしようとしている。7月のASEAN外相会議で、中国の南シナ海進出に言及する共同声明がカンボジアの反対で流れたのだ。「半島の難しさ」は今も人ごとではない。
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