米スプリント株の55%、99年以来の好条件で売却可能に
10月16日(ブルームバーグ):ソフトバンクによる米携帯電話大手スプリント・ネクステル への買収提案に応じて売却されるスプリント株55%は、同業界の買収案件としてはここ10年余りで最高のプレミアム(割り増し価格)で換金される。
携帯電話で日本3位のソフトバンクは15日、スプリント株の約55%を1株当たり7.30ドルで買い取り、最終的に70%の株式を取得することで合意したと発表した。同社は80億ドルを注入してスプリントの債務圧縮を支援する。買い付け価格はスプリントの株価の20日間平均に36%上乗せした水準で、ブルームバーグの集計データによれば、携帯電話業界では1999年以来最高のプレミアムとなる。同業界の50億ドル超の買収では過去3番目の高水準だ。
株価売上高倍率(PSR)が業界最低となっているスプリントのダン・ヘッセ最高経営責任者(CEO)は、同業大手のベライゾン・ワイヤレスとAT&Tへの追撃を目指す中で、2011年末の株価の3倍強の買い付け案を確保した。ソフトバンクは約121億ドルを投じてスプリント株主から買い付けるほか、80億ドルを出資する。
サンフォード・C・バーンスティーンのアナリスト、クレイグ・モフェット氏は電話インタビューで、「売却できるのはいいことだ。スプリントの見通しをめぐってどのような不確実性があったとしても、当面は取り除かれる」と指摘。一方、ソフトバンクの支払いや引き受ける債務の規模を考えると、同社株主が今回の取引を高く評価してはいないのは明らかだと分析した。
今回の取引を受けて、ソフトバンクの株式時価総額は2割減少、同社の信用格付けは引き下げの危険にさらされている。
両社に恩恵スプリントの広報担当スコット・スロート氏は電子メールでの発表文で、「今回の取引は両社にとって恩恵がある」と述べ、「ソフトバンクには、日本で学んだ教訓をより規模が大きく急成長する市場に適用する機会になるともに、株主に大きな価値を生み出す」と指摘。スプリントには「財務面で新たな柔軟性がもたらされ、戦略的投資が可能になり、次世代高速通信網の開発が支えらえる」と説明した。
スプリント株は15日、5.69ドルで終了。モフェット氏によると、7.30ドルで買い付け対象となるのは全体の55%だけであるため、株価が7.30ドルまで上昇することはないという。スプリントの継続事業の価値は1株当たり約4ドルと同氏は試算する。
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更新日時: 2012/10/16 12:28 JST