水銀条約:国の「水俣」命名異論 「教訓」に違和感も−−考える会に100人参加 /熊本
毎日新聞 2012年10月14日 地方版
来年10月、熊本市で採択が見込まれる国際的な水銀規制条約について、環境省が交渉状況などを説明する「水銀条約について考える会」が13日、水俣市公民館であった。政府は水銀汚染で引き起こされた水俣病の教訓を発信するため、条約を「水俣条約」と名づけるよう提案している。一方、会場からは「水俣病問題がまだ解決していない」などとして「水俣」と命名することへの異論が相次いだ。
市民に条約への理解を深めてもらうのが狙いで昨年6月に続いて2度目の開催。約100人が参加した。
環境省によると、条約づくりは09年の国連環境計画(UNEP)管理理事会で決まった。来年1月にスイスで開かれる第5回政府間交渉委員会で条文に合意し、10月に熊本市で開催する外交会議での採択・署名を目指している。会議の一部に水俣市での行事を盛り込む見通しという。
一方、会場で意見を述べた参加者8人の大半が「まだ被害者が苦しんでいるのに、国が『教訓』という美辞麗句で済ませるのは違和感がある」「被害者がいう教訓と国の教訓は違う」などと述べ、「水俣条約」の命名に異論や疑問を唱えた。
これに対し、環境省の寺田達志参与は「水俣病問題の深刻さと過去の反省を踏まえ、水銀対策の重要性を認識してもらうためにも水俣条約と命名したい」と理解を求めた。【西貴晴】