睡眠学習可能に?:眠り抑制と記憶形成の回路は別…熊本大
毎日新聞 2012年10月15日 20時22分(最終更新 10月15日 23時11分)
脳内神経伝達物質のドーパミンが睡眠を抑制する神経回路を、熊本大学発生医学研究所の上野太郎研究員(31)と粂和彦准教授(50)が突き止めた。記憶形成の回路とは別であることも分かり、上野研究員は「眠りながら学習できる可能性が示された」としている。14日付の英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に掲載された。
ドーパミンは眠くならないようにする他、記憶の形成などに作用する。上野研究員らは特定の神経回路を活性化させられるよう遺伝子操作したショウジョウバエを使って研究を重ねた。
その結果、脳内でドーパミンが睡眠を抑制する回路は、脳の部位「扇状体」に至る回路と判明。記憶形成に作用する「キノコ体」への回路とは独立していることも明らかになった。記憶形成に関わる神経細胞を刺激してもショウジョウバエの睡眠に変化はなかったという。
睡眠を抑制することなく記憶形成のドーパミン神経を活性化できたことから、上野研究員は睡眠学習の可能性に言及。「人への応用はまだまだだが、この知見を基に更なる研究が進むことを期待している」と話している。【取違剛】