ハイスクールD×D ~銀白の剣士~ (strik)
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今回から、二巻に入ります。
第1話
Side 一誠
みなさん、こんにちは。兵藤一誠です。
え~、現在、俺はなぜか教会にいます。周囲には見知った人たちもいます。
「ちくしょう! イッセーが何で結婚なんて!」
「何かの間違いだ! これは何かの陰謀だ!」
坊主頭の松田、メガネの元浜。悪友二人が恨めしそうな表情で、俺に言葉を贈っている。
「イッセー初孫は女の子だよー!」
「うぅ、立派になって! 性欲だけが自慢のどうしようもない子だったのに!」
「兄さん、おめでとう! でも、この歳で叔父さんは嫌だから、するときはちゃんとゴムしてよ!」
父さん母さんは号泣している。渚は笑顔だ。しかし、勝手なことばかり言いやがって!
俺の格好は白のタキシード。まるで結婚式のような場面。つーか、結婚式だろ。
お約束の音楽も流れている。あれ? 俺の結婚式!? いつの間にそんなことになってたんだ!?
突然の出来事に動揺を隠せないが、こうなると俺の嫁さんは誰だ?
「イッセーさん、キョロキョロしてはダメですよ」
隣から聞き覚えのある声。横を向けば金の髪をなびかせている美少女―――アーシア・アルジェントがいた。
偶然俺が街で見かけたシスター。オカルト研究部で堕天使から助け出した女の子。その後、悪魔となった子でもある。
眩しい! アーシアのウェディングドレス姿が眩しすぎる。直視できない。
アーシアが俺の隣にいるってことは、俺の―――
「アーシアちゃん! 綺麗だよ!」
「なんでだ! アーシアちゃん!」
参列者の悲鳴が教会の各地から上がる。誰も俺のことは褒めてくれないのね・・・・・・・。
というか、これは俺とアーシアの結婚式! いつの間にそういう関係になっていて、ついにこういう展開になってしまったわけか。よくわからないが、何も問題はない!
「いついかなる時も―――」
何やら神父さんが言っているが、俺はほかのことで頭がいっぱいだった。具体的には、今日の夜・・・・・・・そう、結婚初夜である!
脳内でアーシアがベットで待機している。こ、これは・・・・・・アーシアとエッチができるのか!!
だ、だが、俺に無事完遂できるだろうか? いや、できる! 知識だけは人一倍だし、シミュレーションを来る日も来る日もやっていたではないか!
そう、俺は模擬選ではエースパイロットなのだ。後は実践を待つだけのエリートなのだ!
「それでは、誓いの口付けを」
そうだ、まずはこれがあった。教会でのキス。アーシアとキス!
アーシアは目を瞑って、こちらを待っている。いいんだな! よし! いきます!
『随分と盛り上がっているじゃないか、クソガキ』
だ、誰だ!? 聞き覚えはない。しかし身近な存在のように感じる。
『そうだ。俺はおまえのそばにいる』
・・・・・・・・・誰だ? 周囲にあった教会は跡形もなく消えている。友人も両親も誰も彼もがいなくなっていた。
次第に、平衡感覚、触覚、視覚、聴覚もが消えていく。なんだ!? これはどういうことだ? それにさっきのは誰だ・・・・・・・・?
『俺だ』
目の前に、突然現れたのは、大きな目。血のように赤い瞳。耳まで裂けた口には鋭い牙が何本も生えそろっている。頭部には太い角が並び、全身を覆うのはマグマのような色の鱗。巨木のような腕、足。牙に劣らず鋭そうな爪。なによりも、大きく広がっている蝙蝠のような翼。
俺が知っている生き物に似ているのは―――ドラゴン。
『そうだ。その認識でいい。俺はずーっとお前に話しかけていた、だが、お前が弱小すぎたせいか、今まで俺の声が届かないでいた。やっとだ。やっとお前の前に出現できた』
こちらは口に出していないのに、目の前の存在はわかったらしい。こいつはなんだ?
『なんだ? とは随分ひどいじゃないか。これから共に戦う相棒なのに。俺はただ挨拶をしたかっただけだ』
相棒? なんのことだ?
『わかっているんだろう? なんとなく、そうかもしれないと思ったはずだ。そう、そうれでいい。俺はお前の想像通りの存在だ。いずれ、また話そう。なあ、相棒』
自分の左腕に視線を移すと、俺の腕は紅き鱗に包まれた異形のものになっていた。
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目を開けると、見慣れた天井だ。どうやら夢だったらしい。
左腕を見てみるが、異常はない。しかし、この腕に何が宿っているのかは理解している。
「兄さん、起きてる? リアス先輩もう来てるよ」
扉越しに渚の声が聞こえた。ハッ、と窓から下を見ると部長がいた。
「今、行く!」
渚に返事をして、速攻で寝間着からジャージに着替えた。
Side out
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Side 渚
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
「ぜーはーぜーはー」
「ほら、だらしなく走らないの。渚を見習いなさい。あとでダッシュ十本追加するわよ」
僕と兄さんは早朝の住宅街を走っている。兄さんはすでにきつそうだ。
後ろからは、リアス先輩が自転車で追いかけている。僕は剣道部とはいえ運動部なのでまだまだ余裕だ。
「ハーレム王に俺はなる・・・・・・・ぜーはー・・・・・・・・」
――ズルッ!
「痛っ」
兄さんがつらい状況なのに、そんなことを言ったのでこけてしまった。
「ぜーはーぜーはーぜーはー」
「ナギ、大丈夫?」
「ええ、平気です」
自転車を止めて、リアス先輩が心配してくれた。兄さんはそこまで余裕がないらしい。幸い怪我はしなかったのでよかった。僕の無事を確認して、再び走り始める。
「イッセー。まずは基礎鍛錬から少しずつでも強くなりなさい」
悪魔の世界は単純で力が強ければ強いほど、上を目指せるらしい。他の能力でも上に行けるが、兄さんにそっちの才能があるとは思えない。故に毎朝、体力を上げるために走り込みだ。僕はついでだから、一緒に走っている。
「私の下僕が弱いなんてことは許されないわ」
リアス先輩はそう言った。つまり結構なスパルタなのだ。朝から、二十キロ以上走り、ダッシュは百本以上。筋トレも各種かなりの回数をやっている。
さすがにこれはキツイが、最初に比べれば慣れたと思う。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・」
「ハッ、ハッ、ハッ。ふう」
「お疲れ様。さて、次はダッシュよ」
リアス先輩は本当にスパルタだ。
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「あなたの能力は基礎が高ければ高いほど意味があるのよ」
「ういっす・・・・・・・・六十五・・・・・」
現在筋トレ中だ。兄さんの上にはリアス先輩が乗っている。
「おうっ!」
兄さんが突然変な声を出したので、見てみるとリアス先輩にお尻を叩かれていた。
「邪念が入っているわ。腰の動きがいやらしいわよ」
・・・・・・・・・・・・・こんな時でもいやらしいことが考えられるなんて、本当にすごいと思う。尊敬なんて微塵もしないが。
「そ、そんな・・・・・・六十八・・・・。部長が乗っているので・・・・・・・六十九・・・・・俺のお馬さん根性がマックスになりますよ・・・・・・・・」
お、お馬さん根性・・・・・・・・・・。笑いそうで腹筋がプルプルと震えた。
「腕立て伏せしながらおしゃべりできるなんて、成長したわね、イッセー。もう百回追加しましょうか?」
リアス先輩、それはさすがに兄さんが朝から瀕死になりますって。
「うーん、そろそろ来てもおかしくないんだけど・・・・・」
「? だれか来るんですか?」
僕がそう聞くと、「すいませーん」と言う声が聞こえた。
「イッセーさーん、ナギさーん、部長さーん! 遅れてすみませーん・・・・・・・はぅっ!」
見ると走ってこちらに来ているアーシアさんが見事に転んでいた。見事な転び方だ。ある意味、才能だろう。
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「どうぞ、お茶です」
「ありがとう」
「どうも」
水筒を持っていたアーシアさんからお茶をもらう。兄さんはもらったお茶を一息に飲みほした。
「アーシア、どうしてここに?」
兄さんが僕も思っていたことを聞いてくれた。
「毎朝、イッセーさんがここで部長さんたちとトレーニングをしていると聞きまして・・・・・・その、私もイッセーさんのお力になりたいなーって。今日はお茶ぐらいしか用意できませんでしたけど」
アーシアさんは頬を赤く染める。いい子だな・・・・・・。
「うぅぅ、アーシア! 俺はアーシアの心意気に感動した! ああ、かわいい女の子にそんなことを言われる時が俺に訪れようとは!」
「そ、そんな・・・・・・・かわいいだなんて・・・・・・・///」
さらに頬を赤く染め、両手を頬に当てながらクネクネするアーシアさん。
「(ちょっとナギ、あの二人また二人だけの世界に入っているわよ)」
「(ええ、そうみたいですね。聞きました? 「私もイッセーさんのお力になりたいなー」って言ってましたよ。一緒にやっている僕は入ってません。兄さんだけです)」
兄さんたちの方を見ると仲良くお茶を飲んでいる。僕ら二人はお茶を飲みながらひそひそと話している。
「(ホントよね)」
「(まったくです。兄さん口では「ハーレム王になる」って言ってますけど、この光景を見ると、本気か疑わしいですね。それと、そろそろなんとかしてください、リアス先輩。見てるだけで恥ずかしいです)」
「(ええ、私もよ。ちょうど時間もいいし、任せなさい)」
「ううん! ちょうどいいわ。このままイッセーとナギのお家に向かいましょう」
え? 何で僕らの家に?
「もう荷物が届いているころだわ」
あ~、なるほどね。何が起こるのか理解できた。
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家につくと玄関前に段ボールが積み重ねられていた。
「さあ、イッセーにナギ。このダンボールを部屋に運びなさい」
予想通りの展開なので、黙って運び込んでいく。兄さんは訳が分からないようだ。
「あの・・・・・・これはいったい?」
「アーシアの荷物よ。今日からアーシアはあなたたちの家に住むの」
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その後、家族会議が行われた。当初は兄さんの性欲が問題視されたが、結局アーシアさんは家で住むことになった。
決め手は、リアス先輩が言ったこの一言だろう。
『今回はホームステイは花嫁修業も兼ねて―――というのはどうでしょうか』
この一言で、両親は目から大量の涙を流れ出していた。
父さんも母さんも、僕は別として兄さんがお嫁さんが――――つまり結婚できないと考えていたようで、アーシアさんに兄さんのことをよろしく頼むとお願いしていた。
こうして、アーシアさんは僕たちの家で暮らすことになった。
「・・・・・・・花嫁、ね」
ただ、最後にそう言って少し寂しげな表情をしていた、リアス先輩が妙に気になった。
Side out
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