2月3日といえば節分の日。各家庭では鬼退治の豆を撒く事が全国的な習慣として定着している。ところが、この豆まきに迫る勢いで広まりつつある習慣がある。それが「恵方巻き」だ。
恵方巻きとは、節分の日に太巻きを食べるという習慣。食べる際に、年毎に定められた縁起の良い方角を向き、無言で願い事を念じつつ食べるとそれが叶うとされるものだ。
この習慣は、本来、関西方面を中心としたものだったが、ここ数年間で急速に全国的な広がりを見せている。実際、この数年で初めて恵方巻きを知った関東圏の方も多いはずだ。
この突然とも思える恵方巻きブームには何か理由があるのだろうか?
「新聞・雑誌記事横断検索」で調べてみた。
コンビニエンスストアの販売展開により全国規模に
新聞記事検索のキーワードを「(恵方巻 OR 太巻) AND 販売」とし、ここ最近で扱われている恵方巻き販売に関する記事を出力した。すると04年より恵方巻きの記事が増加、さらにコンビニが記事に付随するテーマとして多く扱われている事に気がつく。
記事によると90年代後半から主要コンビニ各社が恵方巻きの全国展開を開始。それにより関西だけの習慣であった恵方巻きが全国区へと成長したらしい。
こうした恵方巻きの全国販売ついて、セブンイレブンでは自社が先駆者と語る。89年に広島県の加盟店オーナーの発案から販売を開始したところヒット。中国、九州地方での販売を経て、98年にコンビニ初の恵方巻き全国販売を開始したのだ。
セブンイレブンをはじめとするコンビニによる恵方巻き販売の流れを記事から纏めると次のようになる。
※セブンイレブン
1989年、広島県で販売開始
1996年、中国、関西、九州で販売開始
1998年、全国販売開始
2004年、150万本販売達成(前年同期比120〜130%)
2005年、300万本の販売見込み
※ローソン
2001年、全国販売開始
02、03共に前年比200%以上を記録
2003年、鬼の面と福豆をつける
2004年、
2005年、150万本の販売見込み
※ファミリーマート
2003年、全国で予約販売を開始
2005年、方位磁石、恵方盤を先着順でプレゼント
※エーエム・ピーエム
2004年、予約販売を開始
※サークルKサンクス
2004年、お茶割引券添付
2005年、方位磁石と恵方盤プレゼント、横断幕による広告開始
※スリーエフ
2004年、予約者全員に方位磁石と恵方盤をプレゼント
2005年、銭洗い弁天で祈祷した5円玉つきキーホルダー
これを見ると98年のセブンイレブンによる全国販売以降、徐々に売上げを上げた恵方巻きが、03年〜04年を境に主要コンビニ全店で全国販売が行われ、さらには購入や予約時の特典を付けるなど、ブームが一気に過熱した事が判る。
元祖は江戸時代末期
このようにコンビニの販売力により全国的な習慣として根付きつつある太巻きだが、そもそもは何時何処を発祥とする習慣だろうか?やはり「新聞・雑誌記事検索」で調べてみた。
記事によると恵方巻きの歴史は江戸時代末期〜明治時代の初期まで遡り、大阪・船場の商人による商売繁盛の祈願事として始まったといわれる。旧暦では節分が大晦日にあたり、当時は、前年の災いを払う厄落としの一種として、年越しに際し行われたらしい。
しかしこの習慣は明治時代に一旦廃れ、昭和50年代に復活する事となる。
恵方巻きが現在の形で復活したのは、関西の海苔問屋の若手でつくる「大阪海苔昭和会」が、海苔の販売促進イベントとして道頓堀で始めた、恵方巻きの早食いコンテストがきっかけだ。
こうした活動の背景について記事では「冷蔵庫普及や流通の発達により、握りずしが人気を集めた事を海苔業界が海苔消費減少に繋がると危惧。すし屋とタイアップして巻きずしを一般に売り込んだのではないか?」とする証言を紹介している。
ここには、バレンタインデーのチョコレートと同様、業界が仕掛けたイベントに消費者が乗るという構図が見られ、それを全国規模に広めたのがコンビニエンスストアの販売促進力という事であろう。
これを見ると、今後もコンビニ発信のブームが巻き起こる可能性は十分にあり、全国的な新ビジネスにも繋がる事から、恵方巻きとそれに続く商品がないか、コンビニの動向から目が離せない。