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【コラム 撃戦記】

主要4団体で頂点を極めた29歳が見せた「完璧」

2012年10月15日

 世紀の対決も、終わってみればドネアが一枚も二枚も上だった。スピード、パワー、テクニックのどれをとっても、常に見せ場を作ったのはドネアだった。西岡は36歳。主要4団体で頂点を極めた29歳が見せた完璧なボクシングには、西岡のキャリアを封じ込めるうまさがあった。

 左フックの強打を警戒した西岡が、右のガードを固めた工夫も痛いほど分かった。だが、逆にその堅くした防御が西岡の良さを殺してもいた。右にステップインから放つ右フックから左ストレートへの必殺テクニックも、見せたのは中盤の1度だけ。西岡の打ち気を察し、持ち味を封じたドネアをほめるべきだろう。それほどドネアの小憎らしいテクニックが光った。

 だからと言って、西岡の戦略を批判はしない。“浪花のジョー”辰吉から王座を奪取したウィラポン(タイ)に対し、辰吉の後継者として期待された西岡は都合4度の死闘を繰り広げ、負けるたびに引退を宣告されてもなお頂点を追い求めて名誉王者に上り詰めた。悲願のスーパーファイトにたどり着いたドラマを知る者には、キャンバスに沈んだその姿は格好よかった。デビューから18年。たくさんの名勝負を見せてもらった。「ありがとう」と声をかけてあげたい。 (格闘技評論家)

 

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