3年前に閉鎖した原発の隣に、安全性を高めた最新型の原発を建設し、2020年をめどに運転開始を目指すという政府の計画。
この計画をめぐって、原発推進を訴える政権与党と、反対する野党側の間では、連日、激しい議論となりました。
社会民主党 ブトゥケビィチェス党首
「このプロジェクトはとても安全とは言えない」
リトアニア クビリウス首相
「日立製作所が建設するのは、世界で最も安全な原子炉だ。」
社会民主党 ブトゥケビィチェス党首
「それならもっと受注してもおかしくないのでは?」
リトアニア クビリウス首相
「新しい原発は電気を安価に供給できる。」
社会民主党 ブトゥケヴィチェス党首
「それは無理でしょう。」
世論も大きく割れました。
繊維工場を経営する、ビタス・ポシュカさんです。
ポシュカさんは、工場の電気代の負担に悩まされています。
原発の閉鎖以来、電気料金は、3年間で5割も高騰しました。
工場の運営コストの半分近くを占める電気代を節約するため、設備の稼働率を半分に抑えているといいます。
繊維工場経営者 ビタス・ポシュカさん
「原発の建設計画が進めば、電気料金は安くなるはずです。
私は政府が進める計画を全面的に支持しています。」
クビリウス首相は、NHKのインタビューに応じ、建設計画の重要性をあらためて強調しました。
リトアニア クビリウス首相
「エネルギー輸入を一国に依存するのは安全保障上もよくない。
ロシアへの依存を断ち切るために、我々は変わらなければならない。
ヨーロッパ市場の一部にならなくてはならないのです。」
リトアニア政府は、日本の日立製作所と建設に向けて交渉を進めてきました。
日立を選んだ背景には、日本の原子力技術への信頼があるといいます。
リトアニア クビリウス首相
「福島の事故は技術の問題というより自然災害だった。
我々は原子力エネルギーの発展を信じています。」
新しい原発は、リトアニアだけではなく、バルト3国全体に電力を供給する予定です。
リトアニア クビリウス首相
「エストニア、ラトビア、リトアニアは、日立と共に共同開発をするパートナーです。
バルト3国を1つの市場として共同開発しているのです。」
一方、原発への不安はかつてなく高まっています。
首都ビリニュスの大学生、ギエドリュス・リトビナスさんです。
連日、街頭で原発計画の中止を訴えました。
原発反対派の学生 リトビナスさん
「原発計画に反対してください。
(原発建設は)お金を捨てるようなものです。」
福島の事故を見て、原発の危険性を強く意識するようになったいうリトビナスさん。
原発建設に反対する署名活動を行った結果、およそ11万人分の署名が集まりました。
人口300万のリトアニアで、これだけの署名が集まるのは、異例だといいます。
原発反対派の学生 リトビナスさん
「原発計画にはこれまで誰も関心を示してきませんでした。
それを考えると大きな変化を感じます。」
木村記者
「原発の建設計画を推進する与党の選挙本部です。
投票の行方を関係者が固唾をのんで見守っています。」
国民投票の結果、原発建設に反対する票が60%を超えて、多数を占めることが確実となりました。
市民
「国民がノーといったので原発計画は中止すべきだと思います。」
国民投票と同時に行われた議会選挙でも建設計画に慎重な野党が勝利し、新しい政権づくりに乗り出す見通しです。
年内にも大きく動き出す予定だった、リトアニアの原発建設計画。
投票の結果を受け、見直される可能性が高まっています。