大阪府高槻市高西町の作野正光さん（８０）方で１５日夜、３人が刺され、住人で孫の私立大３年、黒田有紗さん（２１）が死亡した事件で、大阪府警は１６日、黒田さんの兄の竜未（たつみ）容疑者（２４）が南に約１．２キロ離れた会社倉庫で首をつって死亡しているのを発見したと発表した。倉庫に残された竜未容疑者のバッグから遺書が見つかり、府警は竜未容疑者が黒田さんや作野さん夫婦を刺した後、自殺したと判断、容疑者死亡のまま殺人容疑などで書類送検する方針。

　府警によると、黒田さんは作野さん夫婦と同居、竜未容疑者は同市内で両親との３人暮らし。

　竜未容疑者は１５日夜、両親と散歩していたところ、突然姿を消して作野さん方に向かった。２階にいた黒田さんを馬乗りになって襲い、左胸付近を短刀（刃渡り１７センチ）で何度も切りつけたという。止めに入った作野さん夫婦も頭や背中などを刺され、妻加知枝（７４）さんが短刀を取り上げた。作野さん夫婦は重傷。

　遺書には、竜未容疑者が９年前に黒田さんに暴力を振るったことが原因で別居させられた恨みなどが記されていた。「両親や親類を苦しめるため、絶望と怒りをわからせたかった」などと書かれていた。

　竜未容疑者は父親が経営する設備工事会社で働いていた。竜未容疑者の遺体が見つかったのは、この会社の倉庫で、倉庫前に止められていた車のドアから血痕が見つかった。

　捜査関係者によると、竜未容疑者は１０年５月、奈良県内の川に家族写真を集めたアルバムなどを大量に捨てたとして、奈良県警に廃棄物処理法違反容疑で逮捕された。その際、竜未容疑者は「家族との思い出を断ち、生まれ変わりたかった」と供述したという。

　竜未容疑者の少年時代を知る女性（６２）は「中学時代はひきこもっており、両親が悩んでいた」とショックを受けていた。黒田さんは大学で軽音楽のサークルに所属。黒田さんと同じ大学に通う女性（２１）は「可愛らしくて、皆に優しい子だった。ニュースを知って皆泣き崩れた。勉強熱心で、音楽が好きだったのに。悔しい」と話した。【武内彩、三上健太郎、高橋隆輔、村上正、遠藤浩二】