ソフトバンクが米スプリントを買収、売上高世界3位の携帯会社に
ソフトバンクはまず、スプリントが発行する転換社債(CB)を31億ドルで引き受ける。スプリントの株主総会と米規制当局の承認後、170億ドルを追加出資する。総額201億ドルのうち、約121億ドル(約9469億円)をスプリントの株主に支払い、80億ドル(約6240億円)をスプリントの財務体質強化などに充てる。スプリントの時価総額は約287億ドル(2兆2397億円)となる計算で、12日の終値にもとづく時価総額を3分の2ほど上回る。
買収には手元資金のほか、主力銀行のみずほコーポレート銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、ドイツ銀行東京支店によるつなぎ融資を充てる。孫社長によると、エクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)は行わない。スプリント買収により、12年6月末で約7944億円あるソフトバンクの純有利子負債は、年内にも子会社化する予定のイー・アクセス(9427.T: 株価, ニュース, レポート)分を含めると3.9兆円に膨らむ。
孫社長は実質10日間で銀行から融資を取り付けたことを明かし、「ボーダフォンの際の借入金利は4%だったが、今回は1.数%だった」と述べた。ボーダフォン買収時より「安心感を持って金融機関は貸してくれた」と説明、借入金返済にも自信を示した。
しかし、市場はソフトバンクの財務が悪化することを懸念している。11日にスプリント買収のニュースが報じられた翌日以降、ソフトバンク株は売り込まれ、株価は約2割下落した。スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は12日、ムーディーズは15日、ソフトバンクの格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。
SMBCフレンド証券投資情報部の中西文行部長は、06年に英ボーダフォン日本法人の買収を決めたときと同じ市場の反応だと指摘する。当時は買収価格が割高との批判が優勢だったものの、ソフトバンクは先行するNTTドコモ(9437.T: 株価, ニュース, レポート)とKDDI(9433.T: 株価, ニュース, レポート)を猛追。時価総額は3兆円の企業に成長した。今回はこれを6兆円に拡大しようとしており、「投資家も孫社長が正しい決断をしていると後で気づくだろう」と、中西氏は言う。
<スプリントは米5位メトロに買収提案>
買収後も、スプリントの経営には同社のダン・ヘッセ最高経営責任者(CEO)があたる。孫社長は会長として「スプリントの経営には積極的に関わる」という。取締役会は10人で構成され、CEOを含めて4人は現スプリント取締役から選任する予定。
会見に同席したヘッセCEOは「ソフトバンクの資金で新たな成長に向けた財務の柔軟性が確保できる」と述べた。ソフトバンクからV字回復のノウハウを学べるほか、同社のLTE技術も共有できると語り、「ソフトバンクとの連携は株主価値向上に向けた最善の方策」との認識を示した。 続く...