この連携を象徴する1つが、7月末に配布されたフリーペーパー「IMA-EVA」。複数の企業を横断したキャンペーン情報などがまとめられており、映画館などで配布されている。7月1日に新宿バルト9で行われた「EVA-EXTRA08」の壁面上映では、提案したティ・ジョイに協賛した安全カミソリメーカーのSchickや、JRAなど複数社のCMが本編上映前に流れるといった試みが実現。航空会社のANAとアパレルのユニクロという異業種間の連動キャンペーンが成立するなど、通常では考えにくい協力関係が、この輪の中で成立している。
■「エヴァ」の舞台は海外へ
そして、「Q」のプロモーションでは、海外へと舞台を広げているのも特徴だ。前2作の「序」「破」は香港や台湾などのアジアや、北米・カナダなどで公開され、大きな反響を得た。
2012年8月には米国・サンフランシスコの「J-POPサミットフェスティバル」で、日本でも人気のリアル脱出ゲーム「ある使徒からの脱出」を再現するイベントを開催。このイベントは、7月にフランス・パリで開催された日本のポップカルチャー見本市「Japan Expo」や、8月の日本テレビ主催イベント「汐博」で実施されたスタンプラリーキャンペーンとも連動した。
こうした、前例のない宣伝手法を次々と打ち出せるのは、作品に熱心なファンがいる本作の、何よりの強みだろう。
実写映画やドラマに比べ、利益のリクープ(回収)できる規模が限られているアニメ業界にとって、リスクを最小限に抑えて制作資金を調達できる製作委員会制度は画期的だった。しかし、リクープの肝であったソフトの売り上げが落ちている今、いかに回収するか、システムそのものの目的も変化している。
そんななか、作りたいものを作るという姿勢を明確にし、自らの力を試すような方法で制作されている本作には、現状を打開するヒントが隠されているような気がしてならない。
(日経エンタテインメント!編集部)
[日経エンタテインメント!2012年9月号の記事を基に再構成]
庵野秀明、ヱヴァンゲリヲン、サブカルチャー、製作委員会、自主制作、JRA、NTTドコモ、ローソン、ANA、ユニクロ、NERV、貞本義行、日本テレビ
アニメという枠を飛び越え、全世界的規模の拡大を見せる「エヴァンゲリオン(エヴァ)」。前作の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」は動員300万人、興収40億円の大ヒットとなったが、同じシリーズの最新作「ヱ…続き (10/15)
アニメや映画、音楽といった「クールジャパン」を海外へ広めるには、それぞれの地域の経済状況、国民性、他国のエンタの浸透具合など、刻々と変わる状況を見極めながらの対応が求められる。今回は、現時点でのJエ…続き (10/8)
アニメやマンガなど日本のエンターテインメントは、「クール・ジャパン(かっこいい日本)」と海外で評価されてきたが、ヨーロッパの経済危機や経産省「クール・ジャパン戦略推進事業」の事業仕分けによる抜本的改…続き (10/1)
各種サービスの説明をご覧ください。