少年犯罪に科す刑罰の引き上げを柱とする少年法改正の論議が近く、法相の諮問機関・法制審議会の部会で始まる。来年の通常国会への改正案提出を目指している。
諮問された案は、犯行時18歳未満だった少年に無期刑を言い渡す場合、10~15年の有期刑に軽くできるとする規定の上限を20年に変更する。
判決時20歳未満の少年に3年以上の有期刑を言い渡す場合は、刑期に幅を持たせた「不定期刑」とする規定について、短期で5年、長期で10年とする上限をそれぞれ5年ずつ引き上げる。
諮問の背景には、犯罪被害者や裁判員からの「成人の量刑と差がありすぎる」「適正な罰を受けるべきだ」という声がある。
確かに同じ事件の共犯でも、20歳と19歳というだけで量刑に大きな差が出るなど、現行法には矛盾もある。殺人など少年が起こした重大犯罪の被害者遺族らの悲しみや、やり場のない怒りも理解しなければならない。
だが、感情だけで厳罰化へ突き進むことは避けるべきだ。少年法は第1条に「少年の健全な育成を期す」と目的を規定している。法制審には、法の理念を忘れず冷静な議論を強く求めたい。
特に少年法が採用する不定期刑は、人格的に立ち直る可能性の高い少年に対する教育や更生、社会復帰を重視した独特の刑罰だ。刑期に幅を持たせることで、教育効果に応じた処遇ができる。
この上限を引き上げると、刑罰の重い方向には裁判員や裁判官の選択の幅が広がる一方で、軽い方の選択肢は狭まる可能性がある。これでは法が求める教育効果が制約されよう。見直しには、十分な検討を加えてほしい。
神戸市の連続児童殺傷事件などを受けて、少年法の厳罰化が進んできた。2000年の改正で、刑罰の対象が「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げられ、16歳以上の少年による重大事件は原則、検察官送致されて刑事裁判で審理されることになった。07年には、少年院に送致する年齢の下限が「14歳」から「おおむね12歳」に引き下げられた。
ただ、少年犯罪は近年減少傾向にある。犯罪白書によると、10年に一般刑法犯で摘発された少年は約10万3000人で7年連続減少し、戦後のピークだった1983年の4割にも満たない。犯罪抑止を厳罰化の理由にはできまい。
専門家には「厳罰化は更生の妨げとなる恐れがある」という声が根強い。一律に厳罰化するのではなく、個々の少年によって柔軟な対応ができる制度が望まれる。
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