2012.10.14 04:03

英科学誌、森口氏に「うますぎる話だと思った」(2/2ページ)

 「うますぎる話だと思った」としたのはネイチャー。疑問の根拠として、2種類の化学物質を使ってiPS細胞を作るとする森口氏の手法について「成功例を聞いたことがない」とする日本の専門家の話を紹介。治療が事実なら「ほとんどの専門家の予測より何年も早い」とも指摘した。

 さらにネイチャーは、iPS細胞に関連する本で森口氏が執筆を担当した部分に、山中教授の論文と同じ表現があることが分かった、との記事を電子版に掲載した。

 記事によると、森口氏が幹細胞研究の進展について書いた部分に、山中教授らが2007年に専門誌に発表した論文と同じ記述が含まれるという。論文盗用の疑いまで浮上してしまったのだ。

 同誌に対して森口氏は「われわれは皆、同じようなことをやっていて、似たような表現になるのはおかしなことではない」と説明する一方、さまざまな論文を参考にしたことは認めたという。 また、米科学誌サイエンスも、治療実施が確認できないことを詳しく紹介する記事を電子版に掲載。国際的に権威のある両誌が、そろって信憑(しんぴょう)性に疑問を示した。

 私生活でも事実と異なる話を繰り返していたようだ。居住する千葉県市川市のアパートの大家の女性は「あいさつする程度だったが、以前『東大の教授になった』と話していた」と振り返る。

 近所の女性(54)によると、森口氏は自らを「東大の医師」と説明。1年ほど前には「ノーベル賞候補のリストに入ったので(スウェーデンの)ストックホルムに行ってきた」と話すなど、“虚言癖”ともいえる発言を数多くしていたようだ。

★関与の研究を厚労省が調査

 森口氏が98-06年度に関わった厚生労働省の研究3件に問題がないか、同省が調査を始めたことが分かった。厚労省によると、3件は、自立して健康に生活できる期間を示す「健康寿命」を延ばす対策が有効だったかの検証など。同省の科学研究費補助金を受けた研究で、補助金は総額約4900万円だった。また、マサチューセッツ総合病院は、iPS細胞を使った治療が病院で実施された形跡は見つからず、そうした研究の承認申請が倫理委員会に提出されたこともないとする声明を発表した。森口氏の主張を全面的に否定する内容。

(紙面から)