パソコン(PC)にスマートフォン(多機能携帯電話=スマホ)と、今や日常生活にICT(情報通信技術)機器は欠かせません。仕事でも自在にICT機器を使いこなすことが、世界的に情報化が進むなかでは必須になっています。次世代に活躍する子どもたちにとっては、もはや学校で「機器の使い方を学ぶ」というレベルにとどまりません。授業そのものを豊かな学びにしていくなかで、ICT機器を使うことが学校時代から当たり前になるようにしていかなければならないと言われています。現状はどうなのでしょうか。
文部科学省は昨年4月にまとめた「教育の情報化ビジョン」で、電子黒板やタブレット型PCなどを授業でフル活用して、一斉授業や個別学習はもとより、子どもたち同士が教え合ったり、学び合ったりする「協働学習」を推進するよう提言しました。こうした学びが21世紀に生きる子どもたちを育むことにつながるとして、「学びのイノベーション(技術革新)」と呼んでいます。
しかし現実はというと、学校にあるPCのうち普通教室に置かれている割合は小学校で15%、中学校で9%(外部のPDFにリンク)でしかありません。必要に応じてラップトップPCやタブレットPCを教室に持ちこんでいる学校もあるでしょうが、まだまだコンピューター教室に置かれているのが主で、ようやく電子黒板が教室にそろい始めたというのが実態でしょう。こうした整備は公立学校の場合、地方交付税で措置されていますので、自治体の考え方や財政状況によって取り組みに大きく差が出てくることも事実です。
国としては、総務省が2010(平成22)年度から「フューチャースクール推進事業」、文科省が11(同23)年度から「学びのイノベーション事業」を行い、両事業が連携しながら学校に先進的な研究をしてもらい、その成果を検証して全国に発信していこうとしてきたのですが、「仕分け」によりフューチャースクール事業は13(同25)年度までに段階的に廃止。学びのイノベーション事業も2013(平成25)年度で区切りをつけ、14(同26)年度からは第2期教育振興基本計画(13〜17<同25〜29>年度)に基づき文科省に一本化して教育の情報化を推進することにしています。
いずれにしても、授業のICT化の歩みは止まらないでしょう。政府は「新たな情報通信技術戦略(外部のPDFにリンク)」の中で2020(平成32)年度までにデジタル教科書・教材やデジタル機器を活用した授業の推進を打ち出していますが、民間レベルでは企業などでつくる「デジタル教科書教材協議会」が政府方針より5年早い15(同27)年度に全児童・生徒にデジタル教科書を整備することを目指して活動。8月には学校の教員や大学の研究者らでつくる「日本デジタル教科書学会」も発足し、学術的な研究に裏打ちされた効果的な授業の普及を図っていこうとしています。文科省も2013(平成25)年冬に子どもたちの情報活用能力を調査するための検討を始めました。
時代の進展は、想像以上にスピードが加速しています。各自治体や学校でも、今から積極的な対応が期待されるところです。
1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。
1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代〜模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。
コメントは編集部がルールに基づき確認してから掲載します。
掲載されたコメントは、あくまでも個人の意見や考えを基にしており、内容については編集部では保証できません。