Blade worker prologe Blade met Orange



月の綺麗な夜だった。少年と、その養父である男は、縁側に二人並んで月を見ていた。

「子供の頃、僕は正義の味方に憧れてた」

養父の独白のような言葉に、少年はすぐ反応した。

「なんだよそれ。憧れてたって、諦めたのかよ」

少年の言葉に、男はすまなそうに笑いながら答える。

「うん、残念ながらね。ヒーローは期間限定で、オトナになると名乗るのが難しくなるんだ。そんなコト、もっと早くに気付けば良かった」

そんな言葉に少年は納得したのか、うんうん頷きながら、

「そっか。それじゃしょうがないな」

「そうだね。本当に、しょうがない」

相槌を打つ男。それに、胸を張って少年は言葉を続ける。

「うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ。爺さんはもうオトナだから無理だけど、俺なら大丈夫だろ。まかせろって、爺さんの夢は――」

"――――俺が、ちゃんと形にしてやっから"

そう言い切る前に、男は笑いながら少年の頭に手を置く。

「ありがとう、士郎。でもね、それより僕は君に「幸せ」になって欲しいんだよ」

少年を優しく撫でながら、男は言った。

「何言ってんだよ、爺さん。俺は幸せだぞ?」

撫でられるのが少し不満なのか、口を尖らせながら少年が答える。

「いや、士郎はもっともっと、「幸せ」になるべきなんだ。だから――」

「分かったよ。爺さんがそう言うなら、爺さんが「参った!!」って言うくらい「幸せ」になってやるよ」

「うん」

嬉しそうに少年を見る男。だが、続く言葉に呆ける事になった。

それと一緒に、爺さんの夢も形にしてやる。どうだ、これなら爺さんも文句無しだろ?」

「――え」

男は、今初めて「1+1=2」である事に気付いたかのような顔をしていた。

「…爺さん?」

黙ってしまった男に少年が問う。

「……士郎は、欲張りだね」

「そうか、普通だろ?」

「そう、そうだね。………僕も、そうすれば良かったんだね。士郎には教えられてばっかりだなぁ。――そうか、士郎が僕の夢も願いも形にしてくれるんだね」

そして、月を見上げながら、

「ありがとう、士郎。―――ああ、安心した」

男は眠るように眼を閉じた。
その様があまりに穏やかで、少年はただ、熱くなる両目を向けて、月が落ちるまで父親であった男を見ていた。

――月の綺麗な夜だった。



爺さん、切嗣オヤジの葬儀から一週間が経った日の事だった。

ピンポ〜ン。

「は〜い」

引き戸を開けると、目の前の、呼び鈴を鳴らしたであろう人が、一瞬驚いたのが分かる。……慣れているから、気には、ならないけど。

「衛宮切嗣さんは御在宅かしら、坊や?」

眼鏡を掛けたショートカットの女の人が尋ねてきた。

「爺さ…切嗣は亡くなりました」

「……そう。線香、あげさせて貰っても良いかしら?」

「はい。それじゃ、どうぞ」

女の人を仏間に通す。切嗣は仏教徒って訳じゃ無いけど、雷画爺さん達が用意してくれた。

チーン。

「………」

この女の人には、切嗣と同じ雰囲気がある。だから聞いた。

「お姉さんは、魔術師なんですか?」

歳の分からない女の人は「お姉さん」と呼ばなきゃダメだよと、切嗣が口を酸っぱくして教えてくれた。……勘だけど、今がその時だと感じた。

「だとしたら、何だ、小僧?」

眼鏡を外したお姉さんは口調も、身に纏う雰囲気も全然違う人になった。……良かった、「オバさん」って呼ばなくて。

「お願いがあります」

「ほう、お願いねぇ?」

上から下に不躾に眺められる。これも、慣れたモンだ。

「で、そのお願いを聞くことで、私に何か利益があるのか?」

口元を意地悪そうに歪めながら聞いてくる。…何と言うか、まじょみたいだ。

「出来たら、出世払いでお願いします」

今の自分じゃ、思い付く方法がこれしか無い。まっすぐ、女の人を見ながら言った。

「出世払い……?ク、クククク、ハハハハハハハハ!!」

ツボに入ったのか、腹を押さえて笑う女の人。一頻り笑った後、真面目な顔になる。

「聞くだけ聞いてやろう。…それで、どう言うお願いだ?」

「俺に、魔術を教えてください」

「何?」

僅かに眉を吊り上げる女の人。ジィーっと俺を見ている。
切嗣の夢と願いを形にするって言っても、俺は何をしたら良いのかすら判らない。俺には力が足りない。知らない事もたくさんある。だから、教わろうと思ったんだ。切嗣と同じ「世界」で生きて来たであろうこの人に。

「……小僧。お前は切嗣の実子じゃないな?」

「はい」

「「こちら」の事は、切嗣に教わったのか?」

「はい」

「ふむ。………なかなかに面白そうな素材ではある

呟いて、しばらく何か考え込む女の人。そして、

「教える以上、厳しく行くぞ。覚悟しておけよ、小僧」

「……士郎です。えっと、先生の名前は何て言うんですか?」

「先生!?(ふむ、なかなか琴線に触れる呼び方だな……)っと私の名前か。蒼崎橙子だ。……名字は呼ぶなよ」

「分かりました、橙子先生」

その日、少年の運命の扉は開いた。



あとがき:Blade worker連載再開でござ〜い。士郎は「正義の味方でその上幸せな人間」を目指します。「正義の味方」は衛宮士郎を構成する重要な要素。と言う訳でこう言う形にしました。
さあ、完結まで頑張るっす!!出来たら、応援よろすくぅ〜。


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