詳説・日本の情報機関part.4
テーマ:行政露呈した工作
公安調査庁の工作活動に関しては、現在までに様々な片鱗が明らかになっています。以下公調のスパイ事件の事例を見てみましょう。
数年前、北朝鮮に亡命した女性がいたのを覚えているでしょうか。一時エキセントリックな取り上げられ方をしたため、マスコミで話題になりました。
ご存知の方も多いでしょうが、あの話には裏があるのです。
実は彼女こと北川和美氏は京都公調の藤原公則調査官の協力者で、一度脱会していたアレフ(旧オウム真理教)にエージェントとして潜入し、スパイ活動を行っていたのです。
北川さんと藤原調査官は男女関係を持っており、後にそれがこじれた結果北川さんは調査官から脅迫を受け、北朝鮮への亡命したようです。
また、1999年には元日経新聞記者杉嶋岑氏が2年ほど北朝鮮に拘束される事件が起きましたが、これも公調の仕業です。
杉嶋氏は公安調査庁に依頼を受け、記者身分を生かして北での情報収集を行っていたとされています。
しかし、当時の公調側の工作担当者、小林又三・関東公安調査局統括調査官が北朝鮮側の二重スパイだったために、工作情報が北に筒抜けになり、杉嶋氏が拘束されるに至ったようです。
なお、小林統括調査官の電話番号は、奄美沖で引き上げられた工作船の船内から見つかった携帯電話の通話記録に含まれていました。要するに小林統括調査官は北朝鮮工作員の指示で動いていたエージェントだったわけです。
ちなみに小林氏は現在も北海道公調局で元気に仕事をなさっているようです。
なお、この2つの事件の詳細については元公安調査官の野田敬生氏のESPIO
の記述を参考にさせていただきました。
カーボン・コピー
公安調査庁と公安警察は何が違うのでしょうか。
公式には、警察は犯罪捜査を主目的とした規制機関である一方で、公調は破防法上の規制機関としての性格と、行政上の情報機関としての性格を併せ持っていると説明されます。と言えどもこれは建前に過ぎません。公安調査庁の活動内容は公安警察と極めて近似しています。
例えばHUMINT、前節で触れたスパイ養成という意味では公安警察と公安調査庁はほとんど同じ活動をしています。
もちろんエージェント獲得の上で、警察のほうが強権的である一方で公調のほうが金にあかした手法を採るなどの違いがあると言われていますがあくまで傾向の問題です。 (※注4)
そうなると、公安調査庁は公安警察のカーボンコピーではないかという疑問が持ち上がります。
しかし、公安警察が、全国に張り巡らされた警察官25万人と監視機材をバックにして、公安専従が1万人弱体制をとっているのに対し、公調は47都道府県の半分以下の22都道府県にしか組織がなく、職員約1500人の極めて弱小な組織です。それゆえ公安警察と同レベルのHUMINT活動が出来るわけでもありません。
しかも、公安調査庁の活動の中心はHUMINT中心であり、警察とちがってSIGINTを活用しておらず、そのために調査手法のオプションも限られたものです。(※注5)
公調は公安警察の劣化・縮小版カーボンコピーと表現するのが妥当なのではないでしょうか。
生き残りへの知恵
以上で見てきたように、情報機関としても規制機関としても中途半端な公安調査庁の存在意義は戦後常に問われ続けてきました。
それでは公安調査庁は、こうした「リストラ官庁論」に対して如何に生き残りを図ってきたのでしょうか。
ひとつの方向性として、カバー範囲の拡大があります。とにかく調査範囲を拡大して独自性を示すということです。実際、公調の監視対象は市民オンブズマン・人権擁護運動・部落解放同盟・生協・ペンクラブ・日本ジャーナリスト会議など、拡大の一途を辿ってきました。
もちろんこれは1%でも危険があれば調べるという、公調の方針に沿ったものではあります。しかし限られたリソースでの野放図な調査範囲拡大は生き残りのためと見られても仕方がないでしょう。
もうひとつが政治権力との癒着です。警察官僚が政界でのさばっていることを見れば分かるように、情報力とは即政治力に直結します。そのため、官邸・自民党に受けのいい情報を上げて「権力の私兵化」によって生き残りを図るということも意識されてきました。
そのためか、近年では公調は国内の選挙分析なども行っていると言われています。
さらに2001年9月11日の同時多発テロが追い風になりました。公安調査庁はこれによって生じた国際テロ重視の潮流を逃さず、調査第二部重視を強力に打ち出します。さらに外務省への出向ポストを増やし(※注6)、「国際テロ」に自らの存在意義を見出したのです。
そのため、最近になって、リストラ官庁論は徐々に鳴りを潜めてきました。
今後公安調査庁はどうなっていくのでしょうか。
一時期、国内の関係機関をまとめて内閣に強力な情報機関を作る予定であるという報道がなされました。報道は結果として誤報でしたが(※注7)、今後公安調査庁は内閣情報調査室と統合するべきだという意見も根強くあります。合併による機能強化論です。
しかしながら、情報機関が分立している状況は情報の正確を期す上で決して誤りではありません。公安調査庁がこのまま存続するのか、それとも合併の道を選ぶかはひとえに政治家の判断次第ということでしょう。
※注4… 公安調査庁は逮捕・強制捜査の権限がないという調査上の不利を金銭で補うため、調査活動費をふんだんに与えられている。しかし調査活動費の多くは実際には私用で消えていると言われている。
※注5…公安調査庁は公式には、盗聴を行っていないとしている。しかしこれはいまだ盗聴が表面化していないだけとの見解が有力である。ただし、どちらにせよ公調のSIGINT能力が低いことは間違いない。
※注6…他省庁から在外公館への出向者をアタッシュと呼ぶ。公調では若手職員が書記官としてアフガニスタン大使館などの危険地で勤務に当たる例が多い。
※注7…政府は日本版の情報コミュニティー(情報機関の間の情報共有の制度)構想を発表したにもかかわらず、記者が情報機関の統合と勘違いしたことに基づく誤報である
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