詳説・日本の情報機関part.3
テーマ:行政灰色の住人
千代田区霞ヶ関。警視庁の道路を挟んで向かいにある赤レンガビルの先には、2棟の近代的な庁舎(合同庁舎第6号館)が建っています。
警視庁側から見て左側のビルに法務本省、右側に検察庁が入居しており、周辺庁舎に比べて一際新しい地下4階・地上21階の両ビルは霞ヶ関に威容を湛えています。
中央省庁の例に漏れず、警備の厳重な左側のビルを入り、真っ直ぐ進むと建物の中心にエレベーターホールがあります。
そこでエレベーターのフロアー案内を見てみましょう。民事局・刑事局・入国管理局など、明るい法務省のフロアーカラーに塗られた内局が入居するこのビルの案内図の中で、9階より上の中層階の数階分だけが、低層階と高層階の明るい法務省カラーに挟まれ、薄暗い灰色に塗られていることが分かります。
灰色にカラーリングされた、この中層階の住人。それこそが今回取り上げる公安調査庁です。公安調査庁とは一体何者でしょうか。
ひとまず、高層階行きのエレベーターに乗って、公安調査庁のフロアーに入ってみましょう。
エレベーターが開くと、白っぽい色の壁と床、そして薄暗い廊下が目の前に飛び込んできます。他省庁と比べて活気がなく、廊下の人通りもまばらです。
どこの部屋も金属製の扉はしっかりと閉ざされ、庁舎内には何に使うのか分からない倉庫・応接室が至るところにあります。また、課名の表示もきわめて小さく遠目にはどこに何課があるか識別できません。
このフロアーは来客の存在を想定していないようです。
省庁でも地方自治体でも、とにかく「役所」という建物に入った事がある人なら、このフロアーには違和感を感じるはずです。
いうなれば、このフロアーは役所というよりまるで巨大な倉庫なのです。
公安調査庁は法務省の外局であり、あくまで法務省の一部です。しかし、一般職員レベルで内局の人間が公安調査庁に出向することはまったくありません。また中央省庁の職員録を見ても、この謎多き組織の名簿は幹部を除いて一切明らかにされていません。
そのためその実態は国民だけでなく、一般の法務省職員にとってさえも謎に包まれているのです。
公安調査庁、公調またはPSIAとも略されるこの組織は国民にあまり知られていません。大多数の人は公安警察との区別さえつかないのが実情ではないかと思います。
しかし、この公安調査庁こそCIAの日本におけるカウンターパート、「もうひとつの公安」なのです。
霞ヶ関の公安調査庁本庁は、総務部・調査第一部・調査第二部の3つの部から構成されています。
調査第一部が国内情報、調査第二部が海外情報の調査分析を担当しており、調査第一部の下に調査一課・調査二課・第三部門・第四部門が、調査第二部の下に調査一課・調査二課・第三部門・第四部門・第五部門が設置されています。
このうち長官・次長・総務部長が検事の指定ポスト、調査第一部長が警察庁キャリアの指定ポストになっており、公調プロパーで到達できるのは調査第二部長が限界となっています。
大まかに言って、調査第一部傘下の課が扱うのが国内公安動向・中核派・革労協・日本共産党・右翼・革マル、調査第二部が対外折衝・日本赤軍・よど号グループ・北朝鮮・中国・ロシアとされています。
しかし、実際は公安調査庁の調査対象は市民運動から新興宗教、果てはジャーナリズムまで幅広く手がけており、公調はそれらの団体からは目の敵にされています。
地方組織を見てみましょう。かつて公安調査庁は全都道府県に地方機関を置いていました。
しかし2001年の行政改革で、政治力を持たず、特に役に立っていないとも評される公安調査庁は格好のリストラターゲットになり、現在では公安調査局が8箇所、公安調査事務所が14箇所へと大幅に減らされました。
元来、公安調査庁は破防法の適用調査をするための機関です。強制調査権限はなく、公安警察と違って逮捕権もありません。
それゆえ犯罪抑止には役にたちませんし、普段何をしているかもよくわからないので「リストラ候補官庁」「ポンコツ官庁」扱いをされるのです。
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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E5%AE%89%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%BA%81