京都大は1日、米バイオ医薬品ベンチャー「アイピエリアン」からヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)作成に関する特許を譲り受けたと発表した。ア社特許は、京大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授らが開発・出願した技術と似ており、昨年、米国の特許庁が、どちらが先に発明したかを選定する審判(インターフェアランス)の開始を宣言する可能性が高まった。係争になる恐れがあったが、今回の譲渡により、再生医療や創薬の分野で最先端に立つ米国で年内にも「山中特許」が成立する公算が大きくなったという。
京大は三つの遺伝子を導入するiPS細胞作成技術の特許を国内外に出願し、日本では09年11月に特許権を取得した。一方、バイエル薬品(大阪市)も類似の技術開発に成功し、国内外に特許出願。同社の関連会社から権利を譲り受けたア社が英国で10年に特許権を取得した。今回の京大への譲渡は、ア社が昨年末に申し出たもので、係争を避ける目的とみられる。金銭のやり取りはない。
一方、譲渡に伴い、京大側はア社と、京大が持つiPS細胞関連の基本特許技術の使用を許諾するライセンス契約を結んだ。ア社は今後、京大特許で作成したiPS細胞や分化細胞を使い、さまざまな治療薬の研究開発を行うことができる。また、山中教授が1月にア社の科学諮問委員に就任した。山中教授は「より研究に専念できる環境を整備していただいた。ア社との連携を強め、特に創薬分野でのiPS細胞技術の実用化を国内外で進めていきたい」と話している。
米国では、日本のように最初の出願者に特許権を認める「先願主義」ではなく、最初の発明者に認める「先発明主義」を採用。係争になると、研究ノートの調査などが必要で、膨大な時間と多額の費用がかかる可能性があった。(毎日新聞)
iPS特許、京大が米企業から無償取得
京都大学は1日、様々な組織の細胞に変化する人のiPS細胞(新型万能細胞)を作製する方法の特許を、英米で特許取得・出願中の米企業から無償で譲り受けることで合意したと発表した。
iPS細胞は山中伸弥・京大教授が世界で初めて作製に成功し、2008年9月に国内の特許を取得。しかし欧米では、京大をはじめ複数の研究機関や企業が関連特許を出願しており、激しい競争が続いている。今回の合意により、京大がiPS細胞の国際的な知的財産権を制する可能性が高まった。
京大に特許を譲渡するのは、米国のベンチャー企業「アイピエリアン」(I社)。人の細胞に3~4遺伝子を導入してiPS細胞を作る方法に関する特許で、独製薬企業バイエル・シェーリング・ファーマが08年6月に国際出願し、その後I社に譲渡されていた。英国で成立済みのものや、欧米や中国、韓国、豪州などに出願中の計約30件を京大に譲り渡す。
I社の作製法は山中教授の方法とよく似ていたため、発明者を特定する審判を近く開くことを米国特許庁が決定。長期にわたる審判を避けるため、I社は昨年12月、特許の無償譲渡を申し出ていた。
(読売新聞)
iPS細胞特許、米バイオベンチャーが京大に無償譲渡 係争回避し研究に専念
京都大学は1日、再生医療に使う「新型万能細胞(iPS細胞)」関連特許で、米バイオベンチャーのアイピエリアン(カリフォルニア州)と協力することで合意したと発表した。1月27日付で、アイピエリアンが保有する特許を京大に無償譲渡。アイ社と京大が保有する特許のライセンス供与を受ける。両者はヒトiPS細胞の作製特許で優先権を主張していたが、共同歩調をとることで、京大が米国などで出願した特許の成立に大きく前進した。
iPS細胞は皮膚などの細胞から作れ、あらゆる細胞や組織に成長する能力を持つ。京大の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功。4つか3つの遺伝子を組み込んで作製する技術などで出願。4つの遺伝子を使う技術については国内などで特許が成立している。しかし、ヒトiPS細胞については独医薬大手バイエルが3つの遺伝子で作製する方法を発明、譲渡を受けたアイ社が米英などに特許出願していた。
両者の特許はほぼ同様の内容で、米特許商標庁はどちらに優先権があるかを審判する方向で手続きを進めていた。その場合、数億円の弁護士費用が必要なうえ、結論が出るまでに2年ほどかかるとされる。iPS特許のライセンスビジネスはまだ小規模なので、アイ社は係争を維持するメリットが薄いと判断したものとみられる。
京大で会見した山中教授は「知的財産の部隊はアイ社と粘り強く交渉していた。これで研究に専念できるので感謝している」と語った。また松本紘総長は「無益な係争を回避したい意志が両者にあった。話し合いはスムーズに進んだ」と明かした。
これで、京大が世界に出願しているiPS関連特許の成立に前進した。しかし、iPS細胞の作製技術は多様な手法が世界中の研究機関やベンチャーから出願されており、再生医療に必要な特許がどれになるのかは不透明だ。(日本経済新聞)
コメント:
この案件について各誌が、一様に取り上げているが、まあ、記事的には日経新聞が一番正確だ。
さすがは「経済誌」。日経の最後の1文が重要なのでね。
若干補足しておくと、前にも書いたが、ヒトiPS細胞の臨床応用・ビジネス利用の際には、「山中基本特許」を軸に数百程度の各種特許(強いのから、小粒でもピリッと辛いものまで)の組み合わせで展開される。
だから、最終ゴール(100メートルとでもしようか)に向けてというなら、米国で山中基本特許が近いうちに成立した段階(たぶん、今年中)でも、50メートルいくかいかないかくらいだという感じかな・・・。
中でも強いのは、医薬品のみでヒト正常細胞からiPS細胞を創る特許だが、その特許は上記のベンチャーも、まだ持っていない。「山中基本特許」からみれば、その特許が今後の最大の脅威となるだろう。
まあ、もちろん、センダイウイルスで創る方法も忘れていないよ。
その技術と「山中基本特許」とのクロスはできていることを考慮したうえでの、上記コメントでした( ´艸`)