ヒトiPS細胞と「死の舞」
テーマ:ブログヒト万能細胞、たんぱく異常で「死の舞」 理研が解明
ES細胞(胚(はい)性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)などヒトの万能細胞は、一つずつにばらして培養すると99%が死ぬ。この「細胞死」の仕組みを、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターが解明した。細胞の形を保つたんぱく質が過剰に働き、細胞が踊るように動く「死の舞」をして死滅した。
細胞死については特定の酵素の働きを抑えると細胞死を3割程度に減らせることはわかっていたが、その仕組みは明らかになっていなかった。
理研の研究チームがヒトES細胞を観察したところ、ばらした直後、細胞の周りが膨らんだりしぼんだりしながら激しく動き、数時間後に破裂して死んだ。「死の舞」は、細胞の形を保つたんぱく質「ミオシン」が過剰に働くことが原因。細胞をばらすと酵素が働き、ミオシンが過剰に活性化され「死の舞」が現れ、細胞死するという。
一方、「死の舞」をしない細胞は腫瘍(しゅよう)になる確率が5倍程度高かった。「死の舞」は正常な細胞に備わっている特徴という。笹井芳樹・器官発生研究グループディレクターは「安全な細胞を選ぶ目安になる」と話す。6日付の米科学誌「セル・ステムセル」に掲載される。(朝日新聞)
万能細胞の死のメカニズム解明 理研、移植治療に貢献
人体のさまざまな組織や細胞に成長する能力を持つヒトのES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)の塊を一つずつバラバラにして分散培養すると、高い確率で細胞死を引き起こす原因を理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)のチームが解明した。細胞移植治療の安全性向上に役立つという。日本時間7日付の米科学誌セル・ステム・セルに論文を発表した。
チームは平成19年、ヒトES細胞やiPS細胞に限り、分散培養を行うと99%の確率で細胞死を起こすという問題を発見。「Rhoキナーゼ」という酵素の活性化により細胞死が起こることから、この酵素の働きを阻害する薬剤を使い、細胞死を抑えることに成功したが、詳しい原因はわかっていなかった。
チームは詳細な観察を行い、分散培養の開始直後から、細胞が表面を泡立たせる激しい細胞運動を起こし、破裂して死に至る特有の現象「死の舞」を突き止めた。細胞分散と同時に細胞死を促す信号が発信されることで、細胞の骨格タンパク質「ミオシン」が過剰に活性化されることが引き金になっていた。
また、長期培養を続けると、ごくまれに死の舞を行わず、細胞死しないヒトES細胞が発生することがあることも発見。その細胞を移植すると高確率で腫(しゅ)瘍(よう)化することも分かった。
チームの笹井芳樹ディレクターは「死の舞を起こさない細胞を除けば腫瘍化を防ぐことができ、細胞移植治療の安全性向上につながる」と期待を寄せた。
(MSN産経ニュース)
コメント:
「iPS細胞(人工多能性幹細胞)などヒトの万能細胞は、一つずつにばらして培養すると99%が死ぬ。」
・・・私のような寂しがり屋の細胞種ということだねえ・・・「万能細胞」は(*^▽^*)
シンパシーを感じるぜ!
だから、私の研究対象として、相性が良かったのかな?(笑)
死の舞をおこさない「万能細胞」の安全性は非常に悪く、かといって、簡単に死んでもらっても困る。
「長期培養を続けると、ごくまれに死の舞を行わず、細胞死しないヒトES細胞が発生することがあることも発見。その細胞を移植すると高確率で腫(しゅ)瘍(よう)化することも分かった。」
・・・と記事にあるが、われわれも、ヒトiPS細胞で確認済みで、それがどんな性質を持つかのみならず、どうすれば「腫瘍化」が防げるかもわかっている。
臨床応用上では、ヒトiPS細胞の「標準化」を進めるのと同時並行で、長期的に安全性および生存率が高い「ヒトiPS細胞の保存方法・培養方法」を確立することが重要であろう。