先日、ニューヨークタイムスのサイエンス欄(11月28日)に興味深い記事が掲載されていた。
「Innovation Report Card(イノベーションの通知表)」!・・・解説をふくめてコメントしておこうと思う。
まず、欧州諸国によるThe Innovation for Development Reportが、世界各国のイノベーションを起こしうる総合力(Innovation Capacity Index: ICI) を評価したところ、世界131カ国全体では1位スウェーデン、2位フィンランド、3位米国。日本は世界15位という結果が導かれた。
ランキングが好きな米国にも類似の評価指標(Innovation Index)は、もちろんある。
それ(Innovation Index)とThe Innovation for Development ReportのICIとの違いをまとめておくと。
The Innovation for Development ReportのICIは・・・
A.米国以外の国が作製したもの。
B。経済社会的な事象に焦点を当てている。
・・・という大きな違いがある。
詳細を述べれば、ICIは次の5つの大きな項目のパフォーマンスを総合的に評価し点数化する。
1.Institutional Environment(政治・経済がイノベーションをサポートしやすいものになってるか)
2.Human Capital, Training, Social Inclusion(教育レベル、女性たちの社会参加など)
3.Regulatory and Legal Framework(起業しやすいビジネス環境なのか)
4.Research and Development(研究成果、特許等/単位あたり)
5.Adoption and Use of Information and Communication Technologies(一般家庭、政府・公共サービスのIT普及度)
では、それぞれのカテゴリーでの日本・米国の順位は、いかに?
1、日本(35位)、米国(22位)
2、日本(29位)、米国(17位)
3、日本(17位)、米国(5位)
4、Research and Development・・・日本(4位)、米国(5位)。
おお~、米国に勝っている!
5.日本(22位)、米国(9位)
グローバルにみれば、項目4以外は、日本は2流・・・日本は「2流」じゃ、だめなんですか?と民主党の某 議員が言いそうだな(笑)。
コメント:
海外に比べ諸環境が2流でも、「科学研究の成果」(4の項目)は米国と並ぶ世界のトップクラスである日本。
これは個々人の努力の賜物だろう。世界一医療費を抑制されているにも関わらず、世界トップの長寿国であるこの国は、劣悪な環境にありながら、がんばる医師・看護師らのおかげ。この現象と瓜二つ。
ただし、これ以上、科学も医療も予算減らして、いじめれば、今、それらの仕事をしている人材もモチベーションを更に失う。また、中長期的に良い人材が集まらない。
「人的資源はいったん枯渇してししまうと、その回復には途方もない時間がかかる。」と、先の「仕分け」で科学者らが発言していた。
が、科学の話をされても・・・という方には、医師不足・看護師不足で「医療崩壊」といわれている日本の現状という例をあげれば、すぐ納得できるでしょ?
不足しているからといって、すぐに人材を補充できない・・・教育に、医師なら国家試験までに6年、その後、必須の前期研修だけでも2年かかる。それでも、彼らを1人前に育てるには、更に時間とお金(血税)がかかる・・・。
まあ、このままの日本の政策では、上記の項目4も、早晩、2流国になるということである。そして、失業率など、経済指標の悪化は、まずます加速されるし、社会保障もズタズタだ。。。
(4)以外の「弱み」(1、2、3、5)をある程度克服することも必要だが、全部一緒には無理だ。そういう夢のような話を吹聴し、今、立ち往生しているのが今の日本政府。
今の社会情況からすれば、(4)という「日本の強み」にさらなるリソースを注入するStrengths-based approach の手法をとるのが最も効率が高いと思われる。
無論、この手法をとるか否かについては国民合意が必要なのは、言うまでもないが・・・。
いずれにせよ、イノベーションこそが社会に価値・付加価値をもたらし、雇用を生み出し、中長期的に貧困を減らし、社会を豊かにする唯一の道であるということを基本に据えたアプローチを今こそ、この国はとらねばならない。
念仏を唱えていても、雇用不安はなくならないし、日本の社会は疲弊するばかりなのである。