新型インフルエンザ対策の柱として国家備蓄が進められる一方で、通常のインフルエンザでは10代の患者への使用が原則中止されている治療薬タミフルについて、厚生労働省は30日、「新型感染の危険性を慎重に考慮した上で、10代でも治療や予防に使用できる」との見解をまとめた。
同日午前に開かれた衆院厚生労働委員会でも、上田博三健康局長が予防投与について「可能だ」との見解を表明。従来も、合併症などで「ハイリスク」と判断された10代の患者には使用されてきた。
ただ、今回の新型インフルエンザについては、鳥インフルエンザ(H5N1型)とは違う「弱毒性」とされ、重症度が必ずしも明確になっていない。このため同省内には「患者の症状の重さと薬の副作用のリスクを、現場で慎重に見極め判断してほしい」(安全対策課)との声が出ている。
この決定には下記の米国CDCの決定が下敷きになっている。
米疾病対策センター(CDC)は米東部時間28日午後7時、豚由来インフルエンザウイルス感染の確定例、疑い例の小児を診る米国の臨床医に向けて暫定ガイダンスを発表した。1歳以上の幼児の豚由来インフルエンザの治療と予防に、オセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)の投与が推奨された。1歳未満小児へはオセルタミビルの投与により「ベネフィットがあるかもしれない」とされた。先立って27日、FDAがオセルタミビルの豚インフルエンザへの予防投与や1歳未満小児への緊急使用に許可を出していた。なお同ガイダンスは暫定的なもので、今後、データの蓄積により変更され得る。
・1歳以上小児には抗ウイルス薬の治療を推奨。
・オセルタミビルの緊急許可で1歳未満小児の治療・予防も。
・3カ月未満乳小児への予防投与は推奨しない。
しかし、日本では、つい最近、下記のような報告があったばかりである。
<タミフルと異常行動「因果関係否定できぬ」…厚労省研究班>
インフルエンザ治療薬タミフルを服薬した10歳以上の子どもは、服薬しなかった子どもに比べ、
飛び降りなどの深刻な異常行動をとるリスクが1・54倍高いという分析結果が18日、
厚生労働省研究班(班長=広田良夫・大阪市大教授)の最終報告書で明らかになった。
「タミフルとの因果関係は否定できず、深刻な異常行動に絞った新たな研究を実施すべきだ」
と指摘しており、現在は原則中止している10歳代への使用再開は難しくなってきた。
最終報告書は近く、厚労省薬事・食品衛生審議会安全対策調査会に報告される。
別の検証作業では、「関連は見つからなかった」とする結論が出されており、
同調査会では10歳代への使用をいつ再開するかが最大の焦点だった。
研究は、2006年度からインフルエンザと診断された18歳未満の患者約1万人を集め、解析した。
このうち、急に走り出すなどして死亡やけがに結びついた深刻な異常行動に限定して調べたところ、
服薬した場合、リスクが1・25倍高くなった。特に注意喚起の対象となっている10歳以上の場合、
リスクは1・54倍になった。
一方、うわごとを言うなど軽症のものも含めた異常行動を起こす全体のリスクは、
飲まなかった場合に比べて0・62倍と低かった。
(2009年4月19日03時06分 読売新聞)
これでは、日本の患者さんは、もちろん、使う側の現場の医師たちも、たまったものではない。なんか、一瞬のうちに、なし崩しだな。
こうせざるを得ない「新型」って・・・。