今日の新聞各紙では、国会での臓器移植法改正案の
衆議院通過が報道されていた。
移植学会の重鎮のコメントでは「移植をすれば、助かるのに・・・」
ということが書かれていた。
しかし「助かる」というのは、どの程度をもってのことなのか?
詳しい数値が書いていないので、ここで、最新の数字を挙げておく。
こういう数値こそ、1人の患者のエピソード以外に、
報道機関は紹介したほうがいい。
この難しいテーマを人々が考える上で、重要な数字だ。
たとえば心臓移植について。
心臓移植の成績は
当初に比べ
随分よくなった。
しかし、それでも
拒絶反応や
感染のために
最初の1年に
10%前後の患者が亡くなっています。
また、その後も
毎年
少しずつ亡くなられ、
最近の成績だけを見ると、かなり良くなりましたが、
5年の生存率は
70%くらい、10年生存率は
50%くらいです。
<データ補足>
・国際心臓・肺移植学会による世界中での心臓移植例40,755人の
追跡調査による統計では移植後の生存率は1年目79%、
3年目71%、5年目63%、10年目で45%で、25年以上生存した事例は無い。
・日本循環器学会心臓移植委員会の最近の5年の統計では1年目80%、
5年目70%以上にまで生存率が向上しており、
医学の進歩と共に生存率は向上する傾向にある。
しかし、まだまだ長いとは言えず、
移植手術が理想的な状態で行われても完全に健康な体にはならないために
「延命治療」と言われるわけです。
そして、人工心臓の開発もゆっくりですが着々と進化はしています。
たとえば、東京女子医科大学などが開発した日本製人工心臓「エバハート」
を装着した心臓病患者の6か月生存率は89%、1年生存率が83%に達し、
心臓移植並みの好成績です。
このエバハートは2005年5月から、日本製の体内埋め込み型補助人工心臓として初めて、国内での人への治験が始まり、2008年8月に終了しています。
なお、こうした現状の数値は[平均値]ですから、
個々の患者によって違うことには注意が必要ですが、それでも
良い判断材料にはなります。