iPS細胞研究:オール・メジャー軍団 VS・・・
テーマ:医療・健康情報出たばかりのNature Biotechnologyだが、ヒト線維芽細胞からヒトiPS細胞ができるまでのDNAのメチル化の変化を最新のバイオインフォマテイックスを駆使して解析した論文が出ている。
Targeted bisulfite sequencing reveals changes in DNA methylation associated with nuclear reprogramming.
Deng J, Shoemaker R, Xie B, Gore A, Leproust EM, Antosiewicz-Bourget J, Egli D, Maherali N, Park IH, Yu J, Daley GQ, Eggan K, Hochedlinger K, Thomson J, Wang W, Gao Y, Zhang K.
Nat Biotechnol. 2009 Mar 29. [Epub ahead of print]
この研究自体の内容は重要ではあるが、基礎的な研究なので、専門家しか興味を示さないだろうし、結果も、すぐに応用に結びつきそうな感触を一般の方には与えるわけではないので、日本のマスコミも報道しないだろう。
ただ、著者名をみて、これは・・・と思った。
トムソン(ウイスコンシン大学)、デイリー(ハーバード大学)、ホッケドリンガー(ハーバード大学)・・・といったiPS細胞研究に関する「オール・メジャーリーガー」の共著論文である。
こうした研究は、1大学、1研究機関だけでできるものではないし、利害を超えた強力な連携がまず必要となる。そりゃ、お金も、かかるけどね。
お互いに、しのぎを削りあっている米国研究者ですら、これを、やってのけたということに、私は大きな意義を認める。
今後、更に、こういう「オール・メジャーリーガー」のドリームチームが必要に応じて組織され、優れた研究が続々と出てくるだろう。無論、個々の研究機関では、独自の研究も進めながら・・・。
とうとう、米国は艦隊を編成して、iPS細胞研究の成果を「総どり」に来たわけだ。
米国でのヒトES細胞の研究助成解禁も、前からいってるように、ヒトiPS細胞研究に拍車をかける。
対する、オールジャパン・・・。もはや、解散して「侍ジャパン」を再編してもらいたい・・・と書きかけて、正直、あほらしくなった。
もはや、1部を除いて、税金を食いつぶされるだけだから。
単に、お金だけを突っ込めばいいというのではないんですよ。官僚・大マスコミさん。
ついでに言っておくと、今頃、ヒトES細胞研究の規制緩和をしても、手遅れに近いから、その、おつもりで。また、どんな分野でもそうだが、(嫌々ながらやる)下手な規制緩和は、かえって規制強化されているのと同様のマイナス効果を生む可能性があるから、ご注意を。
個人的には日本政府には、この分野の研究支援について、次のことを望みたい。
WBCのときのイチローではないが、(日本の個々の優秀な研究者たちの、あるいは、成果を心待ちにしている患者さんをはじめとする方々の)「心が折れない」ようにするためには、もはや、米国との戦略的協調体制を強化する方向での支援策をひねり出すべきではないか?
特許がどうのこうのなんて、もはや、大部分を米国に押さえられそうな状況で、5分近くにまでもっていけるなら、日本全体としては十分だから。
iPS細胞を最大級の効率とスピードで、応用(ツールから再生医療まで)することを優先するなら、上記の様にしてほしい。