昨日、表題のような報道があり、ぱっと見ただけでは、
一般の方々は、少なからぬショックを受けるのではないか?
がん遺伝子を含む4種類の遺伝子で作った新型万能細胞(iPS細胞)を移植した
胚(はい)から育てたマウスの約6割が、1年後にがんになったとする調査結果を、
山中伸弥・京都大教授が5日、東京で開催中の日本再生医療学会で明らかにした。
これまでは半年で約2割が発がんすると報告していた。
さらに時間をかけて調べたところ、作製の1年後、発がん率は3倍に高まったという。
「c―Myc」というがん遺伝子を除く3遺伝子で作ると、マウスはほとんどがん化しなくなったが、
iPS細胞由来の遺伝子を受け継ぐ子孫はめったに生まれなくなった。
不完全なiPS細胞になっている可能性があるという。
山中教授は「世界中でiPS作製方法の研究が進んでいるが、
時間をかけて安全性を評価する必要がある」と話している。(読売新聞)
コメント
前から、このブログでも書いていることだから繰り返さないでおこうと思い、
昨日は書かなかった。でも、やっぱり一言、書いておいたほうがよさそうだ。
マウス、サル、ヒトの寿命は、それぞれ、2年、20~30年、80年。
この理屈でいけば、マウスの2年のフォローでの癌化率でヒトの一生分がおおよそ
「推定」できるのでしょう。
だから、C-MYc入りのiPS細胞で、90日で20%、2年で60%なら、
ヒトも一生のうちで、ほとんど全員、甲状腺がんや脳腫瘍ですね。
C-Myc(-)のプラスミドiPSのキメラでも90日で数%が癌化するなら、
2年なら、10%くらいになるかもしれません。
そこで・・・
「いまや、トランスポゾンiPS細胞の登場でiPS細胞の安全性問題は早期に決着がつくだろう。
しかし、マウスでは検出されなかった奇形腫がサルでは検出されるし、
今までの報告ではマウスで大丈夫だったのも、白血病になったサルもいる。
トランスポゾンiPS細胞の安全性検定は、サルでもやるべきだ(自治医大、花園先生)。」
全く、そのとおりです。
一方、山中教授は、講演の中で、ここでも書いているように
「しっかり、トランスペアレンシー(説明責任)をもって、
リスク・ベネフィットを言うべきだと思い」データを示しますと言い、
以下のような講演をされ、冒頭の新聞記事報道がなされたのです。
なお()内の言葉は私の追加です。
C-Mycなしでは、形態では良質なiPS細胞があらわれるが、
できたiPS細胞のクローン中に例えばOct3/4のような未分化マーカーが
過剰発現しているのがある(=分化抵抗性)。
こういうのは、ちゃんと、神経なら神経に分化してくれない。
こういう未分化細胞の混入は再生医療の際に癌化リスクを背負い込む。
ただ、C-Mycありだと、こういうことはおきないが、(報道のように)癌化率は60%になってしまう。
来年は、きっと、導入因子がゼロで、できるだろう。
ただ単に導入因子の数を減らせばいいのか?といえば、違うかもしれない。
(化合物だけでできたとしても、かえって、怖い。初期化を起こすような強力な薬剤など、
人体に入れたら何をするかわからない。)
また、注目のプラスミドiPS細胞のキメラマウスのフォローアップのデータも
あらためて披露され・・・
ゲノムへのインテグレーション有りなら、90日間で60%死亡。
ゲノムへのインテグレーション無しなら、数%死亡であった。(示された図より)
なお、ごく最近でた、トランスポゾンiPS細胞の件については、
まだ、マウスの場合と違って、ヒトではトランスジーンを除去できていないし、
少なくとも、ごく最近出た、マウスでのトランスポゾンiPS細胞でも、
(山中教授らがやってるように)緻密なフォロー(癌死亡率はいくらか等を指標にして)をすべきだ。
以上より、今、結局は、まず、レトロウイルスで4因子でiPS細胞を創って、
Creloxpで樹立後にトランスジーンを除去するのが、いいかもしれない。
だから、これを、これから来年にかけて、一生懸命にやっている。
(・・・オイオイ、山中先生、言っちゃったよ(笑)・・・
なお、特に、この話題は、次のブログに続きます!)
総じて、どんなiPS細胞樹立方法でも、ヒトでなら、
なお更、iPS細胞の癌化問題は、まだ、ついてまわりますね。