【レビュー】

世界のテキストエディターから - Windows OSと共に歩んできた「メモ帳」

1 Windows 1.0時代から備わる「メモ帳」

    阿久津良和  [2012/10/11]

    コンピューターの歩みはテキストエディターのそれと同じです。テキストファイルの作成や編集に欠かせないテキストエディターは、現行のOSであるWindows 8のメモ帳やOS XのTextEditのように標準搭載されていることからも、その重要性を理解できるでしょう。今回の「世界のテキストエディターから」は、Windows 1.0時代から最新のWindows 8にも搭載されている「メモ帳」を紹介します。


    メモ帳の代替えエディター「Notepad2」

    LinuxテキストエディターのWindows版「Gedit」

    文書+プログラム=「Notepad++」

    愛され進化し続けている「Vim」

    国産テキストエディター「TepaEditor」

    130種類以上のプログラム言語、150種類以上のプラグイン対応「jEdit」

    四半世紀の歴史と高い完成度を誇る「MIFES 9」

    番外編 テキストエディターの配色を考察してみる

    文書作成のだけために存在する「WZ Writing Editor」

    コンパクトで気軽に試せる「GNU nano」

    完成度の高さとユニークな機能が魅力な「gPad」」

    プラグインによる拡張で自分好みに仕上げられる「AkelPad」

    強力なテキストエディター「GNU Emacs」

    ユーザーコミュニティの手で成長し続ける「xyzzy」

    KDEの優秀なテキストエディター「Kate」

    番外編:「一太郎2012 承」のエディタフェーズを検証する」

    Metro風デザインが目新しい「MetroTextual」

    世界のテキストエディターから - MDI形式のチェコ産テキストエディター「PSPad」

    Windows 1.0時代から備わる「メモ帳」

    私事ではありますが、「世界のテキストエディターから」の執筆を初めて既に一年以上経ちました。数多くのテキストエディターを紹介してきましたが、アプリケーションに対するニーズの根底には、"機能性"や"個人の好み"が大きく関与します。

    そこで注目したいのが、Windows OSに標準搭載される「メモ帳」。ご存じのとおり、必要最小限の機能を備えるテキストエディターですが、その軽快な動作を評価する方は少なくありません。今回は初心に返る意味を込めてメモ帳を取り上げることにします。

    改めて述べるまでもなくメモ帳は、Windows OSの標準テキストエディターですが、その歴史は古く、1985年にリリースされたWindows 1.0までさかのぼります。当時はMS-DOSに付属するスクリーンエディター「MS-DOS Editor」をベースに開発され、機能的に充実しているとは言いがたいものでした。

    しかし、この時点で文字列の検索機能や、折り返し機能、日時の挿入機能などを備えています。この日時挿入機能はWindows 8のメモ帳にも引き継がれていますが、確かにちょっとしたメモ書きをテキストファイルとして残す場面では、便利な機能と言えるでしょう。また、後述するイースターエッグにも利用されていました(図01~02)。

    図01 Windows 1.0日本語版上で動作する「メモ帳」。検索機能や日時挿入機能が備わっています

    図02 興味深いのはカットやコピーといった機能に対するキーアサイン。この時点では[Ctrl]+[C]キーではなく、PC-9801のキーボードにあった[COPY]キーが割り当てられていました

    Windows 2.xが搭載したメモ帳は、機能的にもWindows 1.xのメモ帳と同じでしたが、若干の変更が加わったのはWindows 3.xに搭載されたバージョンからです。正しくはWindows 3.0の時点で、印刷調整を行うために「Page Setup(ページレイアウトの設定:後にページ設定へ改称)」という項目が加わりました。同ダイアログからは、ヘッダーやフッターを記号で指定し、余白調整を行うなど現在のアプリケーションでは当たり前の機能が1990年の時点で搭載されたのです。特定の記号を組み合わせることで、挿入文字列やヘッダー&フッターを挿入するというスタイルは、当時のOfficeスイートでも採用していました(図03~06)。

    図03 Windows 2.03の「メモ帳」。機能的な変更はありませんでした

    図04 Windows 3.0の「メモ帳」。ウィンドウフレームのデザインが当時を思い出させます

    図05 新たに印刷調整を行う「Page Setup(ページレイアウトの設定)」という項目が加わりました

    図06 Windows 3.1日本語版の「メモ帳」。同3.0からの大きな変更はありません

    そしてWindows 95のメモ帳に至ります。この時点でメモ帳というアプリケーションの基礎はひとまず完成しましたが、ソフトウェアには付き物であるバグがいくつか報告されるようになりました。当時を振り返ると思い出すのが、ページレイアウトの設定における問題点。

    同設定項目は前述のとおり印刷時のレイアウト設定を行うものですが、入力した余白値などが保存されなかったのです。そのため、レジストリエディターが活用され始めたWindows 95では、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\NotepadキーにDWORD値「fSavePageSettings」を編集するテクニックが注目されました。

    また、この頃からファイルサイズの制限も目立つようになります。これ以前は大きなテキストファイルを扱う場面は多くありませんでしたが、MS-DOSの時代も終えたWindows 9xの時代になりますと、64キロバイト以上のテキストファイルが登場する場面も増えました。

    しかし、この時点のメモ帳には64キロバイト以上のテキストファイルを開くことができず、関連付けからメモ帳を起動すると「ファイルが大きすぎて、メモ帳では開けません。ワードパッドで開きますか?」というメッセージが表示され、メモ帳の限界を認識するようになったのです。なお、この制限はWindows 9x時代までであり、Windows 2000以降のメモ帳では64キロバイト超のテキストファイルにも対応しました(図07~09)。

    図07 Windows 95の「メモ帳」。ウィンドウフレームの変化やボタンレイアウトがWindows 95風に変化しています

    図08 HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\NotepadキーにDWORD値「fSavePageSettings」を作成し、データ値を「1」に変更することで、ページレイアウトの設定が保存可能になりました

    図09 64キロバイト以上のテキストファイルを開きますと、「ワードパッド」の使用が進められました

    メモ帳はシンプルなアプリケーションだけに、プログラマーが本来の目的とは異なるメッセージや機能を密かに仕込むイースターエッグは多くありませんが、もっとも有名なのは、前述した日時を自動挿入する機能。テキストファイルの先頭行に「.LOG」と記述しておきますと、同ファイルをメモ帳で開く際、ファイルの末尾に日時を自動挿入する機能が用意されていました。確かに便利な機能でしたが、筆者は後述する理由で使用した記憶はほとんどありません(図10)。

    図10 先頭行に「.LOG」と記述しておきますと、同ファイルをメモ帳で開く際に日時が自動挿入されます

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