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新聞週間 報道の責務、果たす決意 10月14日(日)

 第65回新聞週間があすから始まる。

 震災と原発事故に見舞われた昨年に続き、今年もメディアの報道姿勢があらためて問われる年になっている。領土問題の緊迫化である。

 日本政府による国有化をきっかけに、中国では反日デモが荒れ狂い、日系小売店が略奪される事態になった。日本車の販売台数にブレーキがかかり、民間交流も次々に中止に追い込まれている。

 私たちメディアの予想を超える激しさだった。読者も戸惑われたことだろう。

   <日中対立の中で>

 尖閣諸島について日本政府は、「日本固有の領土であり、領土問題は存在しない」と主張してきた。しかしこの間の展開を見れば、そう言うだけでは済まされないことが分かる。

 ことの重大さを見据え、事態の打開につながり得る報道ができていたかどうか―。メディアにとっての重い問いである。

 40年前の国交交渉をあらためて振り返る。中国を訪問した田中角栄首相は周恩来首相に対し、突然切り出す。「尖閣諸島についてどう思うか。私の所にいろいろ言ってくる人がいる」

 周首相は応じる。

 「今回は話したくない。今、これを話すのはよくない」。あっさり棚上げした。

 田中首相が尖閣の問題を強く意識しながら交渉に臨んだのは、このやりとりからも明らかだ。

 その後日本人の間では、尖閣問題は意識の隅っこの方に追いやられていった。

 そんな中で2年前、海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件が起きる。以後、中国の漁業監視船による領海侵犯が相次いだ。

 そこに石原慎太郎東京都知事による購入の動きが持ち上がり、日中関係は坂道をころげるように悪化していった。

 領土紛争ではどちらか一方にだけ理があることは少ない。双方にそれぞれ言い分があるのが普通である。平和的に解決するには、譲歩し合うほかない。

 国境を流れる川に浮かぶ島の帰属を争ったロシアと中国。海峡の島をめぐるロシアとウクライナの紛争。いずれも交渉による痛み分けの解決で手を打っている。

 南大西洋フォーランド諸島の問題では、英国とアルゼンチンは互いに譲らず、最終的に戦争になった。武力による決着が望ましくないのはもちろんだ。日本にはとり得ない選択肢である。

   <過不足なく伝える>

 尖閣の問題で日本のメディアは平和解決の後押しになる報道ができていただろうか。そう考えると忸怩(じくじ)たる思いがわいてくる。

 例えばこの社説でも触れた田中―周会談だ。日本政府は最近まで詳しいやりとりを明らかにしてこなかった。未公開の外交文書をメディアが発掘して報道し、交渉過程が国民の共通理解になっていれば、問題は今とは違う展開を見せていたかもしれない。

 東京都による島の購入計画が浮上したとき、民間出身の丹羽宇一郎駐中国大使は「実行されれば重大な危機をもたらす」として反対した。そのときもメディアは、大使発言の意味するところを詳しく報道することはなかった。

 尖閣、竹島、北方領土の紛争は先の戦争の終結に際し米国が進めたアジア戦略の枠内で生じた問題だ。2国間の枠組みを超える面を持っている。米国が三つの問題にどう関与してきたかの掘り下げも必ずしも十分でなかった。

 領土のような国家主権に関わる問題で、メディアがとるべき姿勢とは何だろう。簡単には答えられない。私たちも悩みながら社説を書いている。

 日本の主張を内外に伝えるのは無論として、相手側の主張も過不足なく報道し、戦争なしで解決する道はないか読者に考えてもらうこと。そして、世界の前例になり得る平和的な解決への地ならしをすること。

 ここではそんなふうに答えておきたい。首脳同士が共通利益を追求し合えるよう環境を整えること、と言い換えてもいい。

 メディアが日本の立場だけを言い立て、国民感情を刺激して対立をあおるのでは、交渉による解決は不可能だ。

 「日中の対立」とひとことで言っても、日本も中国も内側は一枚岩ではない。とげとげしい応酬に心を痛めている人の方が圧倒的に多いはずだ。そうした多様な世論を報道する責任も重い。

   <正確で公正な記事>

 「おびただしい量の情報が飛びかう社会では、なにが真実か、どれを選ぶべきか、的確で迅速な判断が強く求められている。新聞の責務は、正確で公正な記事と責任ある論評によってこうした要望にこたえ、公共的、文化的使命を果たすことである」

 日本新聞協会の新聞倫理綱領はうたっている。領土問題でナショナリズムが沸騰する今こそ「正確で公正な記事と責任ある論評」が大事だと自覚している。

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