社説:新聞週間 震災・原発報道の深化を

毎日新聞 2012年10月14日 02時32分

 東日本大震災から1年7カ月がたった。津波による未曽有の人的被害と、福島第1原発事故の深刻さ。昨年3月11日以後、津波被害や原発事故とどう向き合い、何を読者に伝えるのか、報道は問われてきた。

 復興が進む被災地で、時間がたつにつれて見えてくる矛盾や疑問がある。復興予算の使い道もその一つだろう。息長く被災地の現状を取材し、政治や行政の動きをチェックする。また、重要な課題について深く検証する。新聞の大きな役割だ。

 とりわけ、原発事故による甚大な被害が長期化する福島県の状況には目をこらし続けねばならない。

 福島第1原発は、「冷温停止状態」が達成されたとして、政府によって事故収束が宣言された。だが、最近撮影された原子炉格納容器内のカメラ映像では、内部に湯気が立ちこめていた。中は依然として高い放射線量で、汚染水も増加し続けている。廃炉への道のりは見えない。

 福島の地に住む人々の暮らしも厳しいままだ。避難区域の再編が始まったが、インフラの整備は遅れている。県内外に避難した人も含め、多くの県民の生活は3・11を境に一変してしまった。

 報道各社の記者が集まったマスコミ倫理懇談会全国協議会の全国大会で先月、「原発報道 ジャーナリズムがめざすべきもの」と題して議論が行われた。地元紙である福島民報社の佐久間順社会部長は、原発周辺住民の苦悩について報告した。

 家庭内での放射線に対する考え方の違い、同じ地域で自主避難した人しない人、自治体内で異なる避難区域の再編などを挙げ、「至るところで分断が起きている。葛藤を描くことが地元住民のためになるのかと悩むこともある」と話した。

 県民との距離が近い地元紙ゆえの視線を感じる。同社の報道は「多角的に問題をあぶり出して背景や対策を検証した」として、今年度の新聞協会賞を受賞した。

 また、懇談会の議論では、別の地方紙記者から「『福島問題』でくくられ、地方の問題として片付けられたら困る」と、中央からの目線を戒める声が出た。しっかり受け止めなければならない。

 毎日新聞は5月、核燃サイクル政策推進に向け専門家による「秘密会議」が開催されていたことを報じた。地道な取材からスタートし、原子力ムラの人たちが議論を誘導するために身内だけで作戦を練っていた実態を暴いた。報道は今も続く。

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