論文提出直後(6月1日)、演奏会が6月6日と8日とあった。ちなみに6月8日
は論文発表試験の日(口頭試験のようなもの)で、5月末~6月とテンテコ舞だ
った。演奏会は、6日の方は、ハープとヴィオラとの演奏会で、8日の方はパー
カッションとの演奏会だった。
この演奏会は、再び「日本の音楽」がテーマで、そこのオーガナイザーさんは「今
日本の音楽はブームだから、皆聴きにくるわ!!」と3日間にも渡っての「日本
の音楽演奏会」を企画してしまった。
日本の音楽は彼女のマイブームで、世間ではそこまでブームにはなっていないと
私は思うのだけれど。3日間も「日本の音楽」だけで持たせるのは中々プログラ
ミングが大変だなぁ~というのが正直な感想だった。私の似非篠笛能管のレパー
トリーだけじゃ、とてもとても演奏会1つをカバー出来ないし、かといってフル
ートで現代邦人作曲家だけのプログラムでは、お客さんが集まりそうにない・・・。
しかしながら、まぁ折角だから何か色々な楽器とやる良い機会にしてみよう!と
色々プログラムを考えた。
私は武満徹の音楽観が好きだし、武満はこっちでも知られているので、絶対何が
何でも武満をやりたいなぁと思い、アルトフルートと、ギターかハープとのデュ
オ「海へ」(ハープとの場合海へⅢ)をやろうと思った。しかし何分知名度も低け
れば、知人の少ない私なので、ギターの知人もハープの知人もいない。しかもア
ルトフルートも持ってない。そんなこんなを旦那様に(内心、誰か紹介してくれ
ないかなぁ~と思いながら)相談していたら、気がつくと旦那様も一緒に弾くこ
とになっていた。あれぇ??と思いつつも、旦那様が入ると共演者も大変見つか
るのが早く、フルート・ヴィオラとハープの為の曲が一曲あり、それに決定した
のだった。
武満の音楽は素敵だけれど、哲学っぽい所もあり、現代曲なので「良く分からな
い曲」になりがち。なので、後半は春の海とか、日本歌曲とかをアレンジした物
をやった。そんなプログラムも考えて、ハープの人は以前、私の先生のマルク・
グローウェルスと一緒に、色んな日本歌曲や、童謡やら、宮城道雄の春の海やら
が入った「日本の音楽」というCDを作ったイングリッド・プロキュルールさん
という人。
私がベルギー来たての頃、マルクと一緒に「城ヶ島の雨」を、どっかの教会の
演奏会で弾いていた。遠い異国の地で聞く、地元を歌った城ヶ島の雨。教会の
エコーが一杯掛かった城ヶ島の雨。何だか城ヶ島の雨じゃないみたいだった。
そういえば、三浦市で夕方に鳴る「良い子の皆さん、5時になりました。小さい
お子さんは、家に帰りましょう」っていう市役所の放送のBGMが一時期城ヶ島
の雨で、物凄くやまびこが掛かって、城ヶ島の雨の輪唱みたいになってしまい、
何が何だか分け分からなくなっていた。
教会で聞いた城ヶ島の雨は、分け分からなくはなっていなかったけれど、当時、
「ア~なんか雰囲気が違うなぁ(別に悪い意味でなく)」と思った記憶がある。
もう一つの演奏会は、ずっと前からやりたいと思っていた打楽器とやる事にした。
ずっと前からやりたかった曲が一曲(20分位なんだけど)あったのだ。
日本を出てきた時、横笛の西川先生に、「これだったら、あっちの人とでもやりや
すいと思うから」と言って渡された篠笛・能管&打楽器の為の曲。音楽院時代か
ら、何か機会はないかなぁ~と思っていたのだけれど、中々機会もなければ、機
会を作る余裕もなかったので、ついに譜面を渡されてから5年目にして実現した
のだった。
打楽器の人は、王立モネ歌劇場のオケでも叩いてる人で、何となくずっと前から
勝手に目を付けていた。彼はモンス音楽院時代、同時期に指揮科に居た。といっ
ても打楽器科をとうに卒業し、もう色々仕事もしているし、私達より全然年上で、
殆どの授業は免除で指揮法だけやっていたので学校で会う事は殆ど無かった。音
楽院の演奏会で指揮者としてやって来て、その時にチロチロッと喋っただけだっ
た。
それからかなり経ってから、モネ劇場の演奏会を聞きに行った時にモンスの友人
達に囲まれて彼が居たので、「久しぶり。私を覚えてます?」と声を掛けると、「お
お、ノゾミ!」と正確に名前を覚えていてくれたのだ。アジア人は皆同じに見ら
れやすい上に、私の名前は主に「ノズモ、ノズミ、ノザミ、ノエミ、ナオミ」と
変形し易いのに、シッカリ顔と名前が一致していたので、吃驚した。それ以来勝
手に目を付けたのだ(笑)
その後、最近マルクがとあるパーカッションの人と演奏会をやった時、彼も聴き
に来ていて、その上旦那様と昔からの知り合いだったと分かった(彼もユダヤ人
らしい)。という事で、おお、ヤッパリ縁があったんだ!と勝手に決め込んだのだ。
そんな直後に今度の演奏会の話しがあったので、パーカッションを探すことにな
った。ホントは内心「彼」と決めつつ、しかし何故彼なのだ?と言われると、そ
うですよね~・・・なので、一応マルクに「誰か私と一緒にやってくれそうな打
楽器奏者を紹介してくれないか?」と尋ねてみた。すると、マルクも「ガブリエ
ル(彼)がいいよ」と言ってきた。これはもう絶対彼に縁があるんだ!と勝手に
確信して、今回の演奏会に至ったのだった。
早い話が、音楽の世界は狭く、あんまり打楽器奏者はイナイという事なのだけれ
ど(^^; でも何か直感ってあるような気がする。というより、私はいつも直
感とその場の勢いだけで動いてしまう。
彼はとても忙しく、私も論文に追われまくって、ホント少ないリハーサルにも
関わらず、本番はどうにか良い感じに終った。
旦那様は身内びいき?なのか、それとも本心感心してくれたのか分からないけれ
ど、演奏会後、楽屋(のような所)で、「とても良かったよ~。2人は相性が良い
よ。来年アストリア(ホテルである演奏会シリーズ)に雇おうかな。」と言ってい
た。私も何気に相性が良いのではないだろうかと思ったのだけれど、ガブリエル
さんもそれを聞いてニコニコしていたので、そう思っているかもしれない。
これからも続けられたら良いな。
旦那君よ、あの時の言葉、忘れないでくれ。
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