大津・中2自殺:あす1年 教師のいじめ認識焦点 第三者委、聞き取り開始
毎日新聞 2012年10月10日 大阪朝刊
大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺してから11日で1年となる。学校と市教委のいじめ情報隠しが今年7月に明るみに出て、全国的な注目を集め、国が対策を本格化させるなど影響が広がっている。実態解明を目指す市の第三者調査委員会は今月、教師らの聞き取りに着手。滋賀県警は加害行為をしたとされる同級生らの捜査を慎重に進めている。【千葉紀和、村瀬優子、村山豪】
全国で初めて遺族推薦の有識者を加え、8月末に発足した第三者調査委(委員長・横山巌弁護士)。今月、担任ら教師20人を対象に聞き取りを開始した。教育評論家の尾木直樹法政大教授ら5委員と補佐役の臨床心理士の計6人が面談し、いじめを直接見聞きしたとみられる生徒22人の聞き取りも月内に始める方針だ。
今後の焦点は、いじめ行為の認定だ。市教委は男子生徒への加害行為情報を16項目に整理し、うち暴力など9項目をいじめと認めている。ただ、一部は伝聞などを理由に追加調査しなかった。第三者調査委が新たに事実認定をする場合は、その根拠も問われる。
教師たちが生徒の自殺前にいじめを知っていたかもポイントだ。校長は「自殺前にいじめを認識した教師はいない」と説明してきた。だが先月、自殺当日にいじめを校長に報告した教師のメモがあることが発覚。別の教師3人も「自殺前にいじめの可能性を考えていた」と話し始めたという。
自殺前に複数の女子生徒が担任に「いじめられている」と訴え、男子生徒の父親は家の金が持ち出されたと学校に相談したことが判明している。いじめの早期発見は対策の基本だ。教育現場の教訓とするためにも徹底解明が求められる。
第三者調査委の渡部吉泰副委員長は「今後のモデルケースにしたい」と意気込む。ただ、調査には強制力がなく、どこまで真相に迫れるかが課題だ。第三者調査委は、再発防止策や教育委員会のあり方の提言を含む最終報告を年内にまとめる方針だ。
◇捜査対象数十件
滋賀県警は7月11日夜、同級生らによる暴行容疑で市教委と学校に異例の家宅捜索を行った。県警は六つの容疑で告訴した遺族の告訴内容などから、数十件の行為を捜査対象にしている。
夏休みには当時の同級生を中心に約360人から聞き取りを行い、担任を含む教師らからも複数回、事情を聴いた。