滋賀県の河原恵県教育長は20日の会見で、大津市で中学2年の男子生徒(当時13)が自殺した問題に絡み、一部の教師が生徒の自殺前にいじめを疑っていた可能性がありながら校長が独自の判断でこうした事実を公表していなかったことについて、「学校は公開すべき情報を発信することが重要で、絶対にあってはならないことだ」と学校の対応を批判した。
この問題に関して校長は当初、「自殺前にいじめを認識できなかった」と説明していたが、今月18日にあった遺族が市と同級生3人に損害賠償を求めた訴訟の第3回口頭弁論の際に出された資料で、自殺前に一部の教師がいじめを疑っていた可能性が浮上。校長はこうした教師の存在を市教委に報告していなかったことも判明した。
河原教育長は「教育は学校だけでも教育委員会だけでもできず、情報共有は非常に重要。共有をしっかりするのが肝要だ」と連絡体制の見直しを求めた。
会見では、県立高校再編問題で、長浜市の藤井勇治市長が長浜北高校と長浜高校の統合を容認したことについても言及。「一定の理解を示していただいた」と歓迎したが、統合新校の用地を市が購入する意向を明らかにしたことについては、「新たな用地の購入は、県民の理解が得られるかどうかも含め考える必要がある」と述べ、慎重な姿勢を示した。
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■教師15人聞き取りへ 第三者委員会
大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が昨年10月に自殺した問題で、いじめの実態解明を目指す第三者調査委員会(5人)の4回目の会合が20日、大津市内で開かれた。生徒に対するいじめの内容や学校の対応を調べるため、教師15人に対し10月上旬から聞き取りを始めることを決めた。
会見した横山巌委員長によると、聞き取りの対象は男子生徒への加害行為を目撃したり、当時の2年生を担任したりした教師15人。委員が2人1組になり、学校によるアンケートなどで指摘された16件の加害行為の事実確認や、いじめに対する認識、当時の学校の状況を聞き取る。
教師への聞き取りが終わり次第、生徒たちへの聞き取りを開始。加害者とされる同級生3人のほか、約20人の生徒が候補として挙がっており、さらに絞り込む方針だという。
この日は会合に先立ち、委員5人が生徒の通っていた中学校や校区内、自殺現場を視察した。中学校では4時限目の授業中に3年生の全クラスを回った後、職員室で教師らにあいさつ。横山委員長は「どういう事実があったのかを知り、提言につなげたい。何が改善できるのかを、先生たちと一緒に考えたい」と伝えたという。
マスコミへの登場も多い尾木直樹・法政大教授の来校に、生徒たちが喜ぶ場面もあったという。尾木教授は「子どもたちの顔を見られたのは良かった。これまで話してくれなかった子も、話をしてくれるのでは」と期待を寄せた。