iPS臨床問題:「研究成果に疑義」読売新聞、調査へ
毎日新聞 2012年10月12日 22時30分(最終更新 10月13日 03時44分)
同月中旬、記者は大阪市内で森口氏に直接取材。森口氏は、iPS細胞から心筋を大量に作成する手法のほか、臨床研究の経緯、手術の概要を説明した。ハーバード大学の倫理委員会には、患者と家族が望んだ▽容体が重篤で、他に治療手段がなかった−−などの理由で承認されたと説明した。
しかし後日、記者が改めて森口氏に電話で、倫理委の承認について詳細な説明を求めたところ、「通常とは異なる手続きだった」と説明。確認のため倫理委のメンバーや病院側の取材の窓口を尋ねると森口氏はあいまいにしか答えず、「面倒くさいことになったなあ」と漏らした。
不審を抱いた記者は担当デスクらに報告したうえで、「確実な裏付けがとれなければ記事化しない」と判断した。
森口氏は9月下旬、毎日新聞東京本社の記者にも、同じ内容の取材依頼を持ちかけていたが、同様にいくつかの疑問点は解消できず、記事化は見送られた。
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毎日新聞は森口氏の研究に関する記事を09年の7月から12年8月の間に5本掲載した。09年7月9日朝刊「肝がん細胞からiPS細胞」▽09年9月2日朝刊「肝がん細胞大半を正常化」▽10年2月24日朝刊「薬品投与でiPS細胞」▽12年2月22日朝刊「肝臓がん薬に糖尿病薬」▽12年8月4日朝刊「卵巣凍結でがん治療後妊娠」で、2本は専門家による審査を経た学術誌に掲載されたほか、3本は国際会議で発表したか発表されることが確実だと判断し紹介した。毎日新聞は今後、記事について検証する。