サンドイッチ! 〜キョンはハルヒに3度恋をする〜
第三話 この物語はフィクションです


西中を卒業した俺と佐々木は、同じ北高へと進学した。
北高は県内で中堅クラスの進学校で、俺達の通っていた西中以外にも東中出身者も居た。
谷口とまたつるむ事が出来ると俺と国木田は喜んでいたが、俺達は重大な可能性を見落としていた。

「涼宮ハルヒ、以上」

これ以上に無い簡潔な自己紹介をして俺の後ろの席に座ったのは紛れも無いあのハルヒだったのだ。
同じ東中に居た谷口も、ハルヒは光陽園学院に進学するものだと思っていたらしい。

「涼宮は光陽園学院に合格したはずだろ? それが県内有数の進学校を蹴って、何で北高に来るんだよ」

谷口はウンザリとした顔で俺達に告げた。

「しかも僕達と一緒のクラスだなんて、まるで小学校の頃と同じだね」

そう言う国木田も光陽園学院に行ける実力を持っているはずなのに、どうして北高来たんだ?
隣のクラスに居る佐々木も、担任に光陽園学院を受験する事を勧められたが県立の北高だけを受けた。

「光陽園学院は私立だからね、学費の面で親に負担を掛けたくないって気持ちもあるんじゃないかな」
「滑り止めの私立と併願で受験した俺達に無い余裕だよな、キョン?」

馴れ馴れしく肩を叩いてくる谷口にウンザリしながらも、俺は引っかかるものを感じていた。
国木田の話には筋が通っている、だが金銭面の理由は側面的なものだと俺は思った。
久しぶりに見たハルヒは、中学時代に再会した時と同じく無愛想な顔をしていた。
入学式後のHR(ホームルーム)の間、俺は突き刺さるようなハルヒの視線を背中に受けているような気持ちになり、針のむしろにでも座らされている様だった。
HRが終了し休み時間になると、俺は逃げるようにハルヒから離れた国木田の席へと避難したのだった。

「涼宮のやつ、凄い目をしてキョンの背中をにらみつけてたぜ」
「おいおい、脅かすなよ」

からかうように言った谷口に、俺はそう答えた。

「僕には、涼宮さんがキョンに話しかけるのをためらっているように見えるよ」
「ハルヒの性格ならズバッと言いそうな気もするが」
「それだけ言いにくいんだと思うよ、キョンの方から手を差し伸べてあげたらどうかな?」

俺は国木田の言葉を聞いて考え込んだ。
しかし谷口は渋い顔で俺に忠告する。

「涼宮に声を掛けたって無駄だ、止めとけ」
「そんなにひどいのか?」
「あいつ、黙っていたら美少女だろう?」 
「……まあ、それは否定できないが」

凛とした雰囲気を漂わせるハルヒはクールビューティーに見えない事も無い。
だがハルヒの明るい笑顔を知っている俺には寂しかった。

「だから涼宮に近づこうとする男が結構居たんだが、全員振られたらしいぜ」

谷口はそう言って遠い目をした。
その様子を見て察した俺は谷口に尋ねる。

「まさか、お前もハルヒに告白したのか?」
「俺も涼宮とは一応顔見知りだったからな、イケるかもしれねえって思っちまったんだよ」

ハルヒに告白して振られたから、俺達と話している時もハルヒの話題に触れなくなったのか、解りやすいやつだな。
話しているうちに休み時間が終わり、俺は自分の席へと戻った。
俺と視線を合わせたくないのか、ハルヒは顔を横に向けている。



北高は進学校であり、厄介な事に入学式の日から実力テストがあった。
配られた答案用紙を送る時に俺は後ろの席のハルヒと接する事になるわけだが、ハルヒは一言も声を出さなかった。
テストが終わって答案を回収する時も、ハルヒは黙って俺に答案を渡す。
ハルヒの答案を見ると解答が整然と書き込まれていた。
解答欄を適当な語句を並べてやっとの事で埋めている俺とは大違いだ。
あいつ、勉強はしっかり続けていたんだな。
昔のハルヒと変わっていない部分を垣間見て、俺は少し安心した。
昼休みになり、俺達のクラスにやって来た佐々木は、ハルヒの姿を見ると驚いた顔になる。

「まさか涼宮さんが北高に、しかもキョンと同じクラスだなんてね」
「凄い偶然だよね」

国木田は佐々木にそう声を掛けた。
当のハルヒは自分の席で独りで黙々と弁当を食べている。
人数が増えた俺達は、中庭で弁当を広げて食べる事にした。

「まったく、入学初日からテストだなんて面倒臭えな」
「進学校なんだから仕方ないよ」

愚痴る谷口を国木田がそう言ってなだめた。

「お前なら余裕だっただろうな」

俺は佐々木に声を掛けたが、佐々木は俺の言葉が耳に入っていないようだった。

「もしかして、テストでしくじったのか?」
「いや、そうじゃないけど」

俺の質問に佐々木は首を横に振ったが、元気が無さそうに見えた。

「僕達でテスト答え合わせをしない? そうすれば不安も和らぐと思うしさ」

国木田の提案で、俺達は昼休みをテストの答え合わせに費やした。
佐々木と国木田はお互いの結果に満足しているようだが、俺と谷口の不安は逆に増してしまったのだった。



テストが終わると、ハルヒはすぐに教室を飛び出して行ってしまった。
立ち尽くしてハルヒの背中を見送った俺に、谷口が声を掛けてくる。

「やれやれ、涼宮は相変わらずだな」
「東中でのハルヒは、あんな様子だったのか?」

俺が尋ねると、谷口はうなずいた。

「今のままじゃ涼宮さん、クラスで孤立しちゃうよね」
「俺には関係ない」

国木田のつぶやきに対して、俺はキッパリと答えてやった。
放課後、俺達は駅前周辺を散策して回った。
中学の時と違い電車通学になった分、行き帰りに時間が掛かるようになったのが面倒だが、寄り道の楽しみが増えたな。
もっとも、毎日喫茶店やゲーセンに入り浸っていたら俺の小遣いは底をついてしまうが。
俺達は中学校の学区も重なるほど近かったから、降りる駅も同じだった。
暮れなずむ帰り道、谷口達と別れて独りになった俺は、あの公園へと足を運んでしまった。
そして公園についた俺は、面白く無さそうな顔で立っているハルヒの姿を見つけた。

「ハルヒ!」

俺が声を掛けるとハルヒは驚いた顔をして逃げ出した。
ここで見失うわけにはいかないと俺はハルヒを必死に追いかけ、手をつかむ。

「こんな所で立ち話もなんだ、今夜は冷えるし俺の家に来ないか?」

春になったとは言え日が沈むとまだ寒い。
するとハルヒは黙って腕の力を抜いた。
俺が手を放しても逃げる様子は無い。
そして俺が歩き出すと、ハルヒは黙って付いて来た。
俺の家に着くまでハルヒとの間に会話は無かった。
家に帰ると、お袋も妹も姿が見当たらない。
だから俺はすんなりとハルヒを自分の部屋へと招き入れる事が出来た。

「キョンの部屋に来るのも、ずいぶん久しぶりね」

部屋に入ったハルヒは、そうつぶやいて表情を和らげた。
これなら上手く話せるかもしれないと俺は勇気を出す。

「ハルヒ……この前会った時は済まなかったな……」
「キョンが謝る事無いわよ、あたしが悪かったんだし」

そう言って落ち込んでしまったハルヒに、俺は鞄からあの腕時計を取り出して見せる。

「この腕時計、覚えているか?」
「えっ、あの時あたしが壊しちゃったはずなのに……」

ハルヒは無傷で動いている腕時計を見て、驚きの声を上げた。
俺は時計屋に頼んでパーツを取り寄せてもらい、修理した事をハルヒに説明する。

「壊れた物は捨てなければこうして直す事が出来る、俺達の関係もそうしたいと思ってな」

歯の浮くような気障なセリフを言う俺の顔は相当赤くなっていたと思う。
それは目の前に居るハルヒの顔が赤く染まっていくのを見れば分かる話だ。

「そ、そんな事、よくもまあ言えるわね」
「俺だって恥ずかしいさ」

ハルヒが落ち着いたところで、俺はハルヒに優しく話しかける。

「なあハルヒ、怒らないで聞いてくれるか?」 

俺が尋ねると、ハルヒは否定せずに俺を見つめた。
それを無言の肯定と受け止めた俺は、ゆっくりと話を始める。

「俺はハルヒがずっと前に「楽しくなくなった」って言った理由が解った気がするんだよ」
「本当?」
「ああ、それはベタなものなんだ。小さい頃は目に映る物すべてが新鮮で、初体験の事はワクワクしたもんだろう?」

ハルヒは俺の話を聞くと大きなため息をついて、

「あたしってば、そんな事で悩んでいたなんてバカよね」

と言って自分を嘲笑(あざわら)った。

「俺だって、つい最近になって気が付いた事さ」

俺はそう言ってハルヒを励ました。

「久しぶりにキョンと話せて気持ちが軽くなったわ、ありがと」
「良かったな」

ハルヒが安心したような笑顔を浮かべると、俺も自分の頬が緩むのを感じた。

「だけどキョン、どうしてあたしに声を掛けてくれたの? あたしはキョンの腕時計を壊しちゃったんだし、嫌われても仕方ないと思ってたのに」
「俺だって、ハルヒの考えを真っ向から否定しちまったから、もう2度と口を利いてもらえないかと思ったさ……けどな」

俺はそう言った後、上目遣いで俺を見つめるハルヒに少しドキドキしながら告げる。

「俺のプレゼントしたリボンを着けていてくれたからな、だから俺とハルヒを結ぶ絆は切れていないのかと思えたんだ」
「こ、これは黄色がラッキーカラーだったからよ!」

ハルヒは顔を真っ赤にしながら俺に対して反論した。
今さら何を言っているんだと俺は少しあきれたが、それもハルヒらしいなと俺は思った。

「ニヤニヤするんじゃないの!」

そう言ってハルヒは俺にパンチを食らわせて来たが、照れ隠しにしては痛すぎるぜ。



こうして俺とハルヒは絆を取り戻したのだが、翌日の朝からハルヒはぶっ飛んでいた。

「やっほーキョン、学校に行きましょ!」
「おいおい、家にまで来るやつがあるか」
「キョンが遅刻しないように迎えに来てあげたんじゃない」

俺の質問にハルヒは悪びれずに腰に手を当てて堂々とそう答えた。

「いいか、急いで用意をしてくるからな」

俺はハルヒを玄関前に残して部屋へと戻ったが、その間にハルヒはリビングへとあがってお袋と話していた。
お袋はハルヒにお礼を言っていたがどうしてだ?
疑問に思いながら俺は服装を整えてからハルヒの待つリビングへと向かった。
お袋に弁当について尋ねると、作るのを忘れたと言って昼食代を渡された。

「ハルヒ、何を嬉しそうにしているんだ?」
「別に、何でも無いわよ」

ハルヒが目を輝かせているのを見て、俺は問い掛けた。
あれはハルヒが何か企んでいる顔だと思うんだが。
小学生の時と変わっちゃいない……いや、素地に戻ったと言うべきか。
家を出てからもハルヒは上機嫌だったが、駅へと行く道の途中で佐々木に出会うと表情が少し硬くなった。

「やあキョン……涼宮さん」

しかし俺には佐々木の方がハルヒを見てもっと驚いているように見えた。

「佐々木さんって中学の時のキョンの……友達?」
「そう、僕はキョンの親友さ」

佐々木がキッパリと断言すると、ハルヒはポカンとした表情になった。

「でも心配無用、僕はキョンと友達以上の存在になるつもりもないし、涼宮さんのライバルになるつもりはないよ」

そう言って佐々木が喉を鳴らして笑うと、ハルヒは頬を膨れさせた。

「げっ、涼宮」

いつも駅付近で谷口と国木田と合流する事になっているのだが、谷口はハルヒの姿を見ると国木田の後ろに隠れた。

「そんな事しなくていいわよ、あたしは全然気にしていないんだからさ」
「いや、それはそれでショックなんだがな」

ハルヒがあきれ顔で言うと、谷口は凹んだ様子で答えた。
俺達は5人で学校に登校する事になったが、電車の中でも一番騒がしいのはハルヒだった。

「涼宮を立ち直らせない方が世の中のためになったんじゃないか?」
「まあそう言うな、俺達にとってはハルヒが明るい方がいいだろう」
「お前にとってはの間違いだろ」

そして俺は授業中も、居眠りをしようとすると後ろの席のハルヒにシャープペンで肩を叩かれ、起こされる事になってしまった。

「キョンが補習を受けたりしないようにしてあげているのよ、感謝しなさい!」
「放課後、キョンと遊ぶ時間が減るからだろう?」
「あんたは補習でもしてれば?」

からかった谷口は涼宮にバッサリと斬られた。
いつも俺にツッコミを入れられるハルヒが逆の立場になるとはな。
クラスの連中も昨日と違うハルヒの様子に戸惑いを感じていたが、ついに昼休みクラスを震撼させる出来事を起こした。

「じゃあ俺は昼飯を買って来るからな」
「待ちなさい、キョン!」

学食に行こうとした俺はハルヒに腕をつかまれた。
出遅れたら目当ての物が売れ切れちまうだろう!

「はいキョン、あんたの分のお弁当」

ハルヒがそう言って俺に青い弁当箱を渡すと、クラス中から悲鳴に似た驚きの声が上がった。

「まさか、愛妻弁当か!? 痛てっ!」

谷口がそう言うと、ハルヒは教科書を谷口に投げつけて断言する。

「た、たまたま材料が余ってもったいないから作ったの、キョンの分はオマケ!」

今さら言い訳する事は無いだろうと思ったが、俺は口に出すのを止めた。
きっと谷口は明日も余計な事を言ってハルヒに叩かれるんだろうな。
ハルヒの弁当はお袋が作る物よりも手間が掛かっていて、量が多い。
こりゃオマケで作ったレベルじゃないな。

「別に食べきれないなら残してもいいのよ」
「そうだキョン、残飯処理は任せておけ」

谷口が目を輝かせて言うのを見て、俺はハルヒの作った弁当を残さず平らげた。
俺も大人げない事をしてしまったな。
放課後、俺達はどんな部活に入るのかと話題になった。
北高は進学校のため、部活動への参加は強制ではない。

「涼宮さんは中学の時の部活はどうだったの?」
「陸上部、しつこく誘われたから」

国木田の質問にハルヒはウンザリした表情で答えた。

「ハルヒは足が速いもんな」
「走るのは嫌いじゃなかったけど、退屈だったわ」

周囲はハルヒの俊足に期待を寄せたが、ハルヒ自身はタイムなどに興味が無く、幽霊部員のようになってしまったらしい。

「まあ高校になったら部活動の幅も広がるんだ、お前が面白いと思える物もあるかもしれないぞ」
「そうね」

俺の言葉にうなずいたハルヒは、次の日から様々な部活に仮入部をした。



それから一週間ほど経って、ついにハルヒは自分が探し求めていた部活を見つけたと俺に告げる。
何とその部活動では宇宙人や未来人、超能力者、挙句の果てには異世界人の存在が認められているらしい。
俺はもしかしてハルヒが中学時代みたいになってしまうのではないかと心配した。

「オカルト研究会か?」
「ううん、違うわよ」

俺の質問にハルヒは首を横に振った。
放課後ハルヒが俺と、興味を持ってついて来た佐々木と国木田を案内したのは部活棟の一室だった。

「文芸部?」
「そう、そしてこの子が部長の長門さんよ」
「あ、あの……長門有希です……」

部室の中に入ると、椅子に座っていた眼鏡を掛けた女子生徒が、パソコンを打つ手を止めて立ち上がり、俺達にお辞儀をした。

「なるほど、確かに小説の世界ならば宇宙人が出て来てもおかしくないね」

佐々木は感心したように喉を鳴らして笑った。
小説の初めに「この物語はフィクションです」と断りを入れておけば、宇宙人や未来人、超能力者や異世界人が登場しても構わないのだ。
だからと言ってあまりに支離滅裂で説得力の無い内容だと、読者から痛烈な批判が来るのは免れないが。

「ハルヒ、自分のやりたいものが見つかって良かったな」
「うん!」

俺が声を掛けると、ハルヒは太陽のような明るい笑顔でそう答えた。

「そこで、みんなにお願いがあるのよ」

ハルヒはそう言って、文芸部の置かれた状況について説明した。
北高では5人以上部員が集まらないと、正式な部とは認められないらしい。
文芸部も去年までは3年生が数名ほど在籍していたのだが、卒業して居なくなり、この春から入部希望を出していたのは長門ただ1人。
長門は仮入部期間が終わる5月の連休までの間に5人以上の部員が集まらなければ文芸部は廃部が決定すると告げられた。
しかし人見知りの激しい長門は独りで部員勧誘が出来ず、部室でオロオロと時を過ごすだけだった。
その文芸部の部室に仮入部しにハルヒがやって来た。
長門は戸惑いながらも活動の内容を説明し、恥ずかしいながら勇気を出して自分の書いたSF小説を見せると、ハルヒは心を打たれたのだ。

「そう言うわけだから、はい」

そこまで説明したハルヒは、俺達に入部届を手渡した。

「おいおい、俺は小説なんて書いた事は無いぞ」
「大丈夫、あたしも初心者だったけど、長門さんに教えてもらって始めたんだから」

結局俺達はハルヒに押し切られて文芸部に入部する事になってしまった。
必要な5人を揃えたハルヒは、嬉しそうに長門と一緒に文芸部設立の申請をしに部室を出て行った。

「涼宮さん、すっかり明るくなって良かったね」
「ああ、お前が俺を励ましてくれたおかげだよ」

俺は国木田にお礼を言うと、国木田は首を左右に振る。

「僕は大したことしてないよ、涼宮さんが心を開いたのはキョンが頑張ったからだよ」
「だけど、こんなに早くキョンと涼宮さんの関係が元に戻るなんて驚いたよ、せっかく北高にまで入ったのに、もう僕は涼宮さんに勝てる気がしない」
「おい佐々木、もしかして俺の事を……」
「僕はキョンの親友だよ。それに、僕も昔憧れた涼宮さんが戻って来て嬉しいんだ」

佐々木はそう言うと、俺達と同じ小学校の出身だったと話した。
他のクラスで、ハルヒや俺達の事を見続けて来たらしい。

「涼宮さんは覚えていないかもしれないけど、僕は彼女と会って遊んだ事もあるんだよ」
「じゃあ今度教えてやればいいじゃないか、ハルヒも喜ぶと思うぞ」
「ふふっ、涼宮さんの方から気づいてくれるかどうか試すのも面白いよ」

喉を鳴らして笑う佐々木を見て、これは佐々木なりの意趣返しなのだろうと俺は思った。
文芸部副部長となったハルヒは、執筆活動だけでなく想像力を高めるための経験としてアウトドアでの活動も提案した。
野球大会に参加してみたり、廃屋探検に行ったり、七夕の夜に天体観測をしたり、様々な事をした。
物語の世界で自由を手に入れたハルヒは、想像の翼を広げて飛び回り、「涼宮ハルヒの憂鬱(仮題)」と言う小説を書き上げた。
タイトルに自分の名前を使ったのは自身を含め身近な人間をモデルにしたからだと言うが、フィクションだからって長門を宇宙人にするのはかわいそうだと思うぜ。

「そう言うキョンはどんな小説を書こうと思ってるのよ」
「うーん、そうだな……」

そう言いながら俺も過去を振り返って特異な経験をしている事に気づき、事実は小説より奇妙なものだと思った。
もっとも、これは俺の心の中に秘しておきたい思いだから、小説にするつもりはない。



これからも俺はハルヒと会ったり別れたりする事があるかもしれないが、俺は再びハルヒを好きになれる自信がある。
ハルヒの事を好きだって気持ちが【三度一致】したんだからな。

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