【フランクフルト=下田英一郎、古谷茂久、ソウル=尾島島雄】欧州自動車市場で、小型乗用車を巡る世界大手の販売競争が激しくなりそうだ。攻防ラインは販売価格1万ユーロ(約106万円)。韓国・現代自動車傘下の起亜自動車が来年初頭に9990ユーロの小型車「リオ」を発売。独フォルクスワーゲン(VW)は先手を打ち、今年末にリオよりさらに安い小型車「アップ」を投入する。日本車メーカーは円高克服などが課題だ。
VWは開催中の「フランクフルト国際自動車ショー」で、アップ(9850ユーロ)を発表した。背景には、欧州で急速にシェアを拡大する韓国車メーカーの脅威がある。
| 車名(価格) | 概要 |
|---|---|
| 独フォルクスワーゲン | |
| アップ (9850ユーロ) | 「ポロ」より小さい排気量1000cc級。スロバキア工場で生産。グループ企業との部品共通化でコストを削減 |
| 韓国・起亜自動車 | |
| リオ (9990ユーロ) | 現代自の小型車と車台を共通化し低コスト化。1キロメートル走行時の二酸化炭素(CO2)排出量を85グラムに抑えた |
| 韓国・現代自動車 | |
| i40 (2万3390ユーロ) | 排気量2000ccの中型ワゴン。FTAを活用し韓国から輸出。VWの主力車「パサート」などに対抗 |
| トヨタ自動車 | |
| ヤリス[日本名 ヴィッツ] (1万2900ユーロ) | 仏工場で生産。ゆったりした車内空間を確保。カーナビ機能も高度化 |
| マツダ | |
| CX―5 (未定) | ハイブリッド車並み燃費性能の小型SUV。年5万台の販売が目標 |
2011年1~8月の現代自と起亜の欧州25カ国での販売シェアは4.9%で、前年同期比0.4ポイント上昇。独ダイムラーと並ぶ8位だ。一方、トヨタ自動車など日本車メーカー6社合計のシェアは0.5ポイント低下し、11.3%。欧州最大手のVWは23%と韓国勢を引き離しているが、低価格を武器に日本車のシェアを奪いながら追い上げる韓国勢は不気味な存在だ。
起亜自動車は新型リオを韓国から輸出し、欧州で年8万台以上を販売する計画。リオより小型の「ピカント」は8990ユーロとより安い。従来のVWの最安値モデルは「ポロ」の1万2450ユーロ。現代自の主力小型車「i10」(1万209ユーロ)より2千ユーロ以上高い。
韓国車メーカーには7月に欧州連合(EU)との間で発効した自由貿易協定(FTA)も追い風。現代自が欧州で来月発売する中型ワゴン「i40」は10%の関税が段階的に廃止されるFTAを活用。値ごろな小型車「i30」はチェコ工場で生産するなど柔軟な戦略を取れる。梁承錫(ヤン・スンソク)社長は「i40の投入を足掛かりに12年は50万台(10年比4割増)を目指す」と意気込む。
VWも傘下のシュコダ(チェコ)やセアト(スペイン)などとアップの車台や部品を共通化しコスト競争力を高める。アップの低コスト化は19.9%を出資するスズキに協力してもらう予定だったがスズキが提携解消を申し入れ困難な情勢だ。
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