二〇一一年 水無月 十一日 土曜日■ 福島原発事故について・その10 事故の影響・陸地の汚染 [/links]その9でも指摘したように、これまで原子力発電を推進してきた人たちは、今回の事故をできるだけ小さく見せようとしている。彼らにとって都合のよいことに、低線量放射線による健康被害はまだよく分かっていないし、少なくとも「直ちに」人命にかかわることはない。 しかし、広島・長崎の被爆者の調査などから、年間100ミリシーベルトを超える放射線を浴びると、放射線量に比例して癌死する割合が増えることが分かっている。ICRPが採用しているモデルでは、その割合は1シーベルトあたり5%であり、放射線量が低くてもそのまま比例するとするとしている。 この場合、人数かける放射線量で求められる「シーベルト人」という単位を考えると計算しやすい。10人が100ミリシーベルトの放射線を浴びたら1シーベルト人だし、100人が10ミリシーベルトの放射線を浴びても1シーベルト人になる。そして、20シーベルト人ごとに1人の割合で癌死すると計算できる。 福島原発事故では、陸地の汚染は南東北と関東地方が主だから、チェルノブイリと比べれば面積としては軽微だが、高い放射線に汚染された地域に今でも多くの人が住んでいる。特に問題となるのは福島県の中通りで、外部被曝だけでも年間20ミリシーベルトを超えるところすらあるのに、数十万人が住んでいる。 地震の前の福島市、伊達市、二本松市、郡山市の人口を足すと75万人ほどになる。周辺の町や村を加えれば少し増えるが、避難している人がいるから少し減らして、現在の人口を70万人としよう。被曝量を内部被曝を考えて年間30ミリシーベルト程度とすると、21000シーベルト人だから、年間1000人強が放射線のせいで癌死するという計算になる。 さらに、現在放射能汚染の主な原因物質となっているセシウムの半減期は30年だから、避難や除染が進まないとすると、死者の数が少なくなりながらも何十年と被害が出続けることになる。合計を厳密に計算するには積分をしなければならないが、おおざっぱにいうと、半減期の年数をかけて1割ほど減らせばよい。すると、福島県中通りでの放射線による死者は3万人程度ということになる。 さらに、千葉県北西部を中心として、空間線量が毎時0.3〜0.4マイクロシーベルトのホットスポットができている。年に換算して3〜3.5ミリシーベルト程度だが、内部被曝を考えて5ミリシーベルトとしよう。人口は100万人程度だから、同様に計算すると、この地域での死者は7000人程度となる。 さらに線量の低い地域が南東北から関東全域に広がっているので、ごくおおざっぱに、陸地での放射能汚染によって4万人程度が癌死すると見積もることができる。なお、欧州放射線リスク委員会(ECRR)の Chris Busby 氏は40万人以上が癌死すると予測している。 その11に続く。 |
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