二〇一一年 皐月 十六日 月曜日■ 福島原発事故について・その7 チェルノブイリと福島 [/links]その6を書いてからだいぶあいだが空いてしまった。福島第一原発で起きていることをまとめようとしていたのだが、東京電力や政府から発表される内容がころころ変わるので、どうにもまとまらずに困っていた。しかし、1号機で地震の直後にメルトダウンが起きたという東京電力の解析結果を受けて、つじつまの合わないところはデータがないか隠されていると考えることにした。 そもそも、原子炉の中で何が起きているかは、現時点では誰にも分からない。スリーマイル島の事故でも、原子炉内で何が起きていたのかがわかったのは、事故から6年後だった。そこで、常識に基づいたもっとも可能性の高い推測と私が思うものを書くことにする。 東京電力や政府は、事故をできるだけ小さく見せたいと思っているのが見え見えだが、実際には、3月22日頃(発表は3月29日)に原子炉建屋の外でウランやプルトニウムが見つかっているので、この時点でいわゆる5重の壁がすべて破られていたことになる。原発でこのようなことが起きたのは、チェルノブイリと福島の2例しかない。福島とスリーマイル島は事故のレベルがまったく異なっており、比較にならない。 チェルノブイリの場合、5重の壁の1つである格納容器が設計上存在せず、また減速材として黒鉛を使っていた。黒鉛が燃えたので、放射性物質が上空高く持ち上げられ、200km以上離れたところにもホットスポットができた。 福島の場合、減速材は水なので、それほどの被害にはならないと思われたが、実際には、やはり200km以上離れた千葉県北西部を中心とした地域にホットスポットができている(なお、このホットスポットが形成されたのは3月21日の雨によると考えられる。東京大学柏キャンパスの放射線量の推移を参照のこと)。もっとも、放射線量はチェルノブイリのホットスポットと比べれば低いが、福島の場合ほとんどの放射性物質が海に向けて飛んだことを考えれば、大量の放射性物質が大気中に放出されたことが分かる。 その関連で気になるのは、3月14日に3号機で起きた激しい爆発だ。これは水素爆発だと発表されているが、原子炉建屋で特に使用済み燃料プール周辺の鉄骨が溶けて曲がっていることや、福島第一原発の敷地内に燃料棒の破片が落ちていることなどから、核爆発が起きたと考える人がいる(たとえば Arnie Gundersen 氏)。 3月14日といえば、「トモダチ作戦」に従事していた空母ロナルド・レーガンが福島沖からあわてて逃げている。この理由は、ヘリコプターやその作業員から微量の放射線が検出されたためということになっているが、それは表向きの理由で、実際は核爆発が起きたことを認識したためかもしれない。 3号機の爆発が何であれ、使用済み燃料プールは格納容器の外にあるから、始めから5重の壁に守られていなかった核燃料そのものが、激しい爆発で大気中に放出されたことになる。その点では、福島とチェルノブイリはそれほど変わらない。 その8に続く。 |