二〇一一年 水無月 五日 日曜日■ 福島原発事故について・その9 原発の安全性 [/links]その8で、福島第一原発で臨界が起きた可能性を指摘した。 しかし、福島第一原発で何が起きているかは、正直言ってよく分からない。それには理由が2つある。まず、そもそも圧力容器や格納容器は冷えるまでふたを開けることができないので、人間なりロボットなりが中に入って確認することができない。スリーマイル島の事故でも、圧力容器の中を見ることができたのは事故から6年後のことだった。 もう1つの理由は、東京電力や政府が情報を隠していることだ。たとえば、原発の敷地内でプルトニウムが検出された時も、3月21日と22日にサンプルをとって、翌日には結果が出ていたはずなのに、27日に記者会見で追求されたときには調べていないといい、28日にデータを出してきた。こんなことが何度となく繰り返されている。 彼ら、つまり官僚・東電・政治家・マスコミ・財界は、今回の事故をできるだけ小さく見せようとしている。それは、補償の金額を少なくするためであり、今後も原発を推進するためだ。原子力安全保安院の中には、事故の直後にメルトダウンの可能性を指摘した人がいたが、その意見は黙殺された。 今回の事故の原因は津波であるとされており、「想定外」という言葉が使われているが、実際には、地震の直後、津波が来る前に、1号機の圧力容器内の水位が下がりはじめていた。つまり、地震によって、おそらくは配管のどこかが破損したのだ。しかし、この水位のデータも、NHK が報じるまで隠されていた。 従来、原発の耐震性というと、原子炉の耐震性ばかりが問題となり、周辺施設の耐震性はおざなりになっていた。柏崎刈羽原発では、2007年、地震によって敷地内で火災が起きている。今回の福島第一原発でも、原発に電力を供給していた鉄塔が地震で倒れたことが、事故を悪化させた一因になっている。それだけでも、現存の原発は地震に対する備えができていないと言えるのだが、今回は、原子炉そのものが地震で壊れたことになる。 原発の安全審査基準を作るのは原子力安全委員会だが、この基準が不十分であることは武田邦彦氏が何度も指摘している。ついに斑目委員長も認めざるを得なくなった。原子力発電所は、原発を推進したい人たちが、不十分な審査基準によって安全だと認定し、都合の悪い情報を隠しながら運転している。こんなものが安全であるはずはない。 1954年にソ連のオブニンスクで最初の原子力発電所が稼動して以来、1979年にスリーマイル島、1986年にチェルノブイリ、2011年に福島で、メルトダウンを伴う原子力発電所事故が起きている。半世紀のあいだに3度の重大事故というのは、事故の回数だけ見れば少ないようだが、いったん事故が起きたときの影響の大きさを考えれば、少ないとは言えない。 原子力発電所と言うのは、このような大きな事故がほぼ20年に一度起こるものなのである。それでなくても日本は地震が多いから事故が起きやすいし、人口密度が高いから事故が起きたときの影響が大きい。原発が安全なら東京湾に作ってもよさそうなものだが、東京電力の原子力発電所が東京電力の管内にないという事実が、原発が安全でないことを物語っている。 チェルノブイリで事故が起きたときに、その原因は当時のソ連の官僚主義にあるのであって、西側ではこのような事故は起こらないという声があった。しかし、現在の日本は当時のソ連に勝るとも劣らない官僚主義国家だ。福島原発の事故は起こるべくして起こったとすら思える。 その10に続く。 |
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