二〇一一年 文月 十七日 日曜日■ 福島原発事故について・その12 原子力と核 [/links]その10で、福島第一原発事故に伴う陸地の汚染による犠牲者を4万人程度と見積もったが、群馬大学の早川由紀夫氏作成の地図を見ると、陸上の汚染は、あの記事を書いた時点の想定よりも広い範囲に広がっている。また、これらの地域で作られた農畜産物が、検査が不十分なままに流通しているし、放射能で汚染された汚泥も、建築材料や肥料の原料として全国に流通しようとしている。さらに、その11で述べたように、海洋汚染がこれから深刻になる。 そう考えると、福島第一原発事故の犠牲者は6桁になると考えた方がよさそうだ。チェルノブイリの事故と合わせれば、原子力発電で死ぬ人は7桁になると考えなければならない。原子力発電は他の発電方法と比較して死者がはるかに少ないと言う人がいるが、私に言わせれば、前提となる数字が間違っている。この意見の元となっているのは、たとえば「Deaths per TWh for all energy sources」だろうが、この記事では、チェルノブイリ原発事故による直接的な犠牲者を50人、間接的な犠牲者を4000人としている。2桁違っているのでは、まるでお話しにならない。 こんな物騒な原子力発電所が、そもそもどうして日本にあるのか。国会で原子力関連の予算が初めて認められたのは1954年のことで、提出したのは、当時改進党の代議士だった中曽根康弘氏だ。それを支援したのは、原子力の父とも呼ばれる正力松太郎氏だとされる。正力氏は、CIAから「podam」というコードネームを与えられており、CIAのエージェントであったとされる。このことから、日本における原子力発電の導入に米国の意思があったことが推測される。 原子力エネルギーは英語で nuclear energy という。核エネルギーもやはり nuclear energy という。つまり、原子力と核は同じであり、原子力技術は核技術にほかならない。 世界で初めて核爆弾を作って使ったのは米国だが、戦後の冷戦化で、米ソの核開発競争が激しくなった。その中で、核による発電についてはソ連が先行しており、世界で最初の実用原子力発電所はソ連が作った。米国としては、ソ連の核技術が西側諸国に取り入れられることをおそれたはずだ。そのため、日本を含む西側諸国に米国の技術で原子力発電所を作る必要があったと推測される。中曽根氏や正力氏は、その後日本の原子力を推進することになるが、これはある程度まで米国の意向に沿った動きだろう。 しかし、少なくとも政財界の一部には、別の意思があるのかもしれない。それは、日本の核武装だ。現在東京都知事を務める石原慎太郎氏は、たびたびこの意思を示唆している。原子力技術とロケット技術があれば、比較的短期間で核ミサイルを作ることができる。 日本が国を挙げて原子力を推進している理由には、もう1つ、資源をめぐる地政学的理由があるかもしれない。それについてはその13で述べる。 |
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