二〇一一年 葉月 廿一日 日曜日■ 福島原発事故について・その14 原子力発電のコスト・その1 [/links]日本が国策として原子力発電を推進している理由として、その12で日米両国の核戦略を、その13で資源をめぐる地政学的戦略を指摘した。まとめれば、原子力発電は、核武装の能力を維持するためのものである一方、日本を米国の支配下にとどめるためのものでもある。このようなことを書くと陰謀論だなどと言われそうだが、これ以外に日本政府が原子力発電を推進するべき理由は、私には思い当たらない。 では、電力会社が原子力発電を推進するのはなぜだろうか。もちろん、天下りした役人を役員に抱えているので、国策に従わざるを得ないということもあるだろう。しかし、もう1つの理由は、原子力発電のコストにある。 日本の場合、電力会社には地域独占が認められているので、電気料金を市場で決めることができない。そこで、コストが上がった分だけ電気料金を高くできるようになっている。これを「総括原価方式」という。原子力発電所は建設コストが高いので、電力会社とすれば、原発を作れば作るほど電気料金を上げることができる。その結果、日本の電気料金は先進国の中でも高くなった。一方、原発の運用コストは安いので、原発の依存度を上げれば利潤を増やすことができる(詳しくは原発新設の莫大なコストが莫大な儲けに直結を参照)。 原発の建設コストが高いということは、原子炉メーカーや建設会社が大きな利益を得られるということでもある。また、運用コストが安いといっても、人件費は高い。被曝をするような仕事に対して高い給料が支払われるのは当然なのだが、この高い人件費がすべて現場の労働者に届くわけではない。原発の作業員はほとんどが下請けだから、途中でいくらか差し引かれる。それも、6次請けや7次請けまであると言われているので、分け前にあずかる人は多い。人集めに裏社会が関与しているという話もある。 このように、原子力発電に関しては、多くの人が儲かるシステムができている。コストをかければかけるほど、電力会社の取引先が儲かると同時に、総括原価方式のおかげで、電力会社も儲かる。割を食うのは、電気料金を払う利用者だ。 政府や電力会社は、原子力発電のコストは安いと主張しており、それを、原子力を推進する表向きの理由としている。しかし、それは特定のモデルに基づく計算結果だ。前述のように、原発は建設コストは高いが運用コストは安い。そのため、モデルの作り方によっていくらでも数字をごまかせる。実際、立命館大学の大島堅一氏が発電実績に基づいて計算したところ、発電に直接要する費用だけを見ても、原子力発電のコストは他の発電方法と比べて安くないという結果になった(参考PDF)。 さらに、原子力発電の間接的なコストは、他の発電方法に比べて莫大だ。これについてはその15で述べる。 |
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