滅多に本を読まない私が、今まで何度も読み返した最も愛する一冊です。
元々姉が持っていた文庫本を興味本位で読んでみたのが切欠ですが、
表題作品の世界観や登場人物、切なさ、美しさにすっかり虜になりました。
別のレビューアーさんが仰るとおり、ヒロイン明日香の言葉遣いや話し方に
最初は若干抵抗がありましたが、それも時代を映した表現なのかと。
もう、それ以上に物語の深さと悲しさにどっぷり引き込まれた一冊です。
作品が好き過ぎて当時映画のビデオも奮発して手に入れたほど。
光合成の出来る緑色の髪…と言うロマンチックな題材は秀逸ですし、
彼女を取り巻く幼少時代の館や森、共に住む仲間たちも神秘的で美しい。
主人公のちょっと冴えない研究員の青年が、これまたとても良い味出してて、
ぎこちなく不器用な二人の恋は、やがて悲しい悲劇を生んでしまうのですが、
そこに行き着くまでの二人のふれあいや会話は、とても初々しく無垢。
最後がハッピーエンドで無い所もいいですし、どのキャラクターも
本当に魅力的で印象に残りました。悪役の松崎教授でさえ好ましいです。
中でも、明日香の姉代わりで激しい性格の夢子さんが一番好き。
彼女が信彦を訪ねるシーンは、この本の中でも特に好きな場面です。
ピアノの音色と風の音、木々のざわめき、そして雨の音…。
そんな静かなBGMが似合う物語。何度読んでも色褪せない一冊です。…
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